2006年10月5日(木)「しんぶん赤旗」
代表質問にみる
安倍政権 各党の態度は
安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党の代表質問(衆参両院本会議)が四日、終わりました。歴史認識や憲法、教育基本法の改定、増税など国政の基本問題を通じて、安倍政権に対する各党の態度が見えてきました。
教育基本法成立・「構造改革」促す
自民・公明
「首相の国家観、歴史観に裏打ちされた政治姿勢や政策課題をうかがうとき、まさに今時代が求める首相の誕生だと歓迎する」(片山虎之助参院自民党幹事長)
自民、公明両党は、安倍内閣への支持を表明し、教育基本法改悪法案の早期成立や改憲手続き法案など改憲に向けた動きを加速するよう安倍首相に求めました。
自民党の中川秀直幹事長は「憲法改正の意義」を首相に強調させ、米軍「再編」問題でも「世界とアジアのための日米同盟としての基礎を固めるもの」として“強力推進”を求めました。片山氏は、今国会の重要課題に「防衛庁省昇格法案、組織犯罪処罰法改正案(共謀罪法案)などの処理」も加え、早期成立を迫りました。
公明党も、太田昭宏代表が、「格差の原因を小泉構造改革に押し付けるような指摘は明らかに誤りだ」として、「格差社会」の責任を政治に問う国民の声を「誤り」と断じ、「改革」路線の継承を宣言。浜四津敏子代表代行は、政府の教育基本法改悪法案の意義を指摘して、「教育改革にかける首相の決意と考えをうかがいたい」と決意を促しました。
一方、安倍首相の歴史認識や集団的自衛権行使の容認に向けた研究の表明については言及がなく、逆に改憲手続き法案の早期成立を促しました。
歴史認識・「格差」の根源つく
日本共産党
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日本共産党は、自民党政治の異常を極限まで推し進めた小泉政治を引き継いだ安倍政権に対し、正面から立ち向かい、その根源に切り込む論戦を展開しました。
安倍首相の歴史認識をただした志位委員長の代表質問はマスメディアも注目しました。志位委員長は、(1)かつての戦争を賛美する靖国神社の歴史観(2)かつての戦争を「国策の誤り」として反省の立場を示した「村山談話」(3)「従軍慰安婦」について旧日本軍の関与を認め、反省を示した「河野談話」―の三点に対する首相の認識を追及。首相は、「河野談話」以外については、従来の政府の立場の踏襲さえ明言できず、その異常ぶりがあらわになりました。
改憲問題では、首相が明言した集団的自衛権行使に向けた「研究」も、明文改憲も、その狙いが「海外で戦争をする国」づくりにほかならないことを告発。首相は、それを否定する根拠を示せませんでした。
深刻な問題になっている格差社会と貧困の広がり―。市田忠義書記局長は、「ワーキングプア」の増大について、安倍首相も中枢にいた小泉政権による労働法制の規制緩和の結果だと告発し、「『再チャレンジ』というなら、改悪された働くルールを、もとに戻すべきだ」と強調しました。
また、大企業と高額所得者に力に応じた負担を求め、あらたな負担増・庶民増税の中止を求めました。
市田氏の質問を聞いた労組役員からは、「ジーンとなった。大企業は莫大(ばくだい)な利益を得ている。減税でも優遇されている。こんなことは許せない」と感想を寄せています。
消費税の増税論議“逃げるな”
民主党
民主党は「中身で勝負する」(伊藤基隆参院議員)と“二大政党対決”色を押し出しました。その中身はどうか――。
鳩山由紀夫幹事長は消費税増税論議について安倍首相が「逃げず、逃げ込まず」と言っていることに「結局は逃げると宣言したにほかならない」と“増税”を明確にすべきだという立場から批判。松本剛明政調会長も、今国会に税制を議論する「税制特別委員会」の設置を提案しました。
もともと民主党は「ムダを省いても社会保障関係費が増えて足りないとなれば、消費税として国民に負担していただく以外にない」(小沢一郎代表)との考えをとっています。
教育基本法改悪について鳩山氏は、「政府案は廃案にして、民主党案の成立にご協力いただく方が教育の再生につながる」と主張。政府案より“右より”との評もある民主党案成立への協力を求めました。安倍首相は、「活発な議論を期待する」と述べ、政府案の審議と一緒にすすめる立場を示しました。
安倍首相は、集団的自衛権の行使を政府の解釈変更で可能にしようとしています。松本氏は、自衛権について「わが国が急迫不正の侵害を受けた場合に限り、個別的であれ集団的であれ行使できると考えるべきではないか」と主張。独自に解釈を“変更”するなど、“対決”の足場が不明確なことを示しました。
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