2006年10月7日(土)「しんぶん赤旗」

主張

首相の歴史認識

誤り認めてこそ友好が築ける


 安倍晋三首相の歴史認識が衆院予算委員会の論戦でも焦点となっています。

 安倍首相は、過去の「植民地支配と侵略」を「反省」した村山首相談話や、「従軍慰安婦」問題で国の責任を認めた河野官房長官談話を「内閣としては」、受け継ぐとしています。しかし、「自ら」としては、政府の見解を認めるのは「首相として当然」とするだけで、「特定の歴史観についての発言は謙虚でなければならない」と、語ることを避けています。

 日本共産党の志位和夫委員長は、この「謙虚さ」という首相のいい分に切り込みました。

過去の言動語れないのは

 志位委員長がまず指摘したのは、首相になってからは歴史観を語らないのが「謙虚」だとしている安倍首相が、過去には政治家として特定の歴史観、戦争観について大いに語り行動していた事実です。

 安倍氏は、戦後五十周年にあたっての国会決議が問題になった際、過去の戦争を「日本の自存自衛とアジアの平和」のためだとして決議に反対した「議員連盟」で事務局長代理を務めました。「自虐的」な歴史認識の見直しを求め、決議を採択した本会議を欠席しました。

 志位委員長が指摘したように、以前は特定の歴史観に賛同し、行動しながら、首相になってからは「歴史観を語らないのが謙虚だ」というのは通用しません。首相が自らの歴史観を語れないのは、その歴史観が首相の立場ではとうてい公式に口にできないためではないかと志位委員長がただしたのに、首相は一言の反論もできませんでした。

 志位委員長はさらに、首相が村山首相の談話を引き継ぐとしていることに関連して、首相は村山談話にある、「国策を誤り、戦争への道を歩ん」だという認識を共有するのかと、戦前の政府が決めた「『支那事変』処理根本方針」(一九三八年)、「日独伊枢軸強化に関する件」(一九四〇年)、「大東亜政略指導大綱」(一九四三年)を示して追及しました。

 これらの決定は、日本がおこなった日中戦争や太平洋戦争が、領土拡張と他国支配のための、誤った侵略戦争だったことを証明しています。安倍首相がこれに、「政府が個々の歴史の事実にコメントするのは適切でない」などの理由で答えなかったのは、口では「政府の認識は村山談話のとおり」といっても、首相自身に反省がないことを示すものです。

 安倍首相は「従軍慰安婦」問題でも、「河野談話」を受け継ぐといいながら、かつてみずから国会質問で、「河野談話の根拠は崩れている」と批判した誤りも、言を左右に認めません。これまた口では「受け継ぐ」といいながら、首相としては誤りを反省しない態度です。

 自らの歴史認識を語らない安倍首相は、政治家として「謙虚」どころか、誠実さのかけらも感じられないというのが実感です。

重大な被害与えた責任

 戦前の野蛮な天皇制のもとで日本は、一九三一年の「満州事変」から一九四五年の太平洋戦争敗戦までアジア・太平洋の各地を侵略し、この地域に二千万人以上の犠牲者を含む重大な被害を与えました。

 志位委員長が安倍首相に迫ったように、政治家としての謙虚さというのは、日本が国家として犯した誤りに向き合い、侵略戦争と植民地支配の誤りを真摯(しんし)に認めることです。

 そうしてこそ、日本がアジアの人々と真の友好を打ち立てることができます。


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