2006年10月7日(土)「しんぶん赤旗」

テロ特措法延長案 派兵すでに1万人

米の「長期戦争」に追随


 米軍がアフガニスタンなどで展開している「対テロ」戦争への支援を継続するため、政府が六日に閣議決定したテロ特措法改悪案―。二年間の時限立法だった同法は延長が繰り返され、今回さらに一年の延長が強行されれば、海上自衛隊のインド洋派兵は五年を超え、六年にわたることになります。それは、米国の「テロに対する長期戦争」への主体性なき追随姿勢を示すものです。同法に基づくこれまでの派兵を検証しました。(竹下岳)


 防衛庁によると、二〇〇一年十一月九日に最初の海自艦船がインド洋に向けて出港して以降、現在までに補給艦と護衛艦のべ五十一隻、隊員約一万人が派兵されました。

 米軍をはじめインド洋で活動する各国艦船への燃料提供は九月二十日現在で六百七十八回、約四十五万キロリットル。〇四年末から艦載ヘリコプター用燃料と水の提供も開始し、これら費用の総額は約二百億円に達しています。(表)

全艦船燃料40%

 中東を担当する米中央軍の機関誌『コアリション・ブレティン』四月号は、インド洋での海自艦船の活動について、(1)「不朽の自由作戦」(対テロ作戦)に従事する全艦船の燃料の40%と、アラビア海で活動する米軍艦船の燃料の10%を提供している(2)これまでに百五十隻の米軍艦船とそのほかの百六十隻の艦船への給油を行ってきた―と“絶賛”しています。

 〇四年十一月以来、海自は最新鋭の補給艦「ましゅう」と同「おうみ」も派遣しています。いずれも排水量一三、五〇〇トンで、従来の補給艦(八、一五〇トン)を上回る能力を備えた大型艦です。

対テロ成果なし

 海自が支援対象としている各国艦船の主要任務は、海上を移動するテロリストの捕捉や武器、麻薬の押収などの「海上阻止行動」です。

 米中央海軍によると、米国や英国、イタリア、ドイツ、パキスタンなどの四十五隻がアラビア半島周辺とペルシャ湾で多国籍軍(コアリション)として活動しています。

 しかし、海上阻止行動の具体的成果はほとんど報告されていません。政府も与党に対し「2005年には現場海域における不審船の減少により無線照会数が大幅に減少するとともに、インド洋及び周辺海域におけるテロリスト等の攻撃も最近は発生しておらず」(改悪案の説明資料)と述べています。

 各国が派遣している艦船も小型化し隻数も減っています。海自の月別給油量も最高で四万キロリットル(〇二年三月)でしたが、最近は一千キロリットル(〇五年十月)という月もあります。

 一方、米軍は〇三年のイラク戦争以後、イラクとアフガンでの二つの戦争を「地球規模のテロとのたたかい」として事実上、一体化しています。海自の活動はアフガンなどでの「対テロ」作戦に限定したテロ特措法から逸脱し、イラクでの軍事作戦にも直接、間接の支援を行っていることになります。

泥沼化が深刻に

 今、米軍の「対テロ」戦争全体が行き詰まっています。全世界でテロの脅威は激しさを増し、アフガンでは武装集団タリバンが支配地域を拡大しています。政府も、アフガン国内で「自爆攻撃が急増しているなど、治安情勢はむしろ厳しさを増している」「タリバーンが勢力を盛り返しつつある」(同前)と認めています。米軍など多国籍軍兵士の死者も年々増加しています。(グラフ)

 戦争でテロはなくならず、むしろ拡大することは、この五年間で証明済みです。しかし、ブッシュ米政権は二月に公表した〇六年版QDR(四年ごとの国防政策見直し)で、テロや大量破壊兵器の脅威を口実にした「長期戦争」を宣言しました。テロ特措法の延長はこの「長期戦争」に日本が加担を続けることを意味します。

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