2006年10月15日(日)「しんぶん赤旗」
主張
テロ特措法延長法案
悪循環に終止符を打つときだ
安倍内閣は、十一月一日で期限が切れる「テロ特措法」を一年延長する法案を国会に提出しました。三回目の延長措置です。
「テロ特措法」は9・11同時多発テロにたいするアメリカのアフガニスタン報復戦争を支援するために二〇〇一年に制定された参戦法です。政府は多くの国が日本の支援に感謝しているといいますが、報復戦争はテロの根絶どころか開戦後最悪の事態になっています。戦争ではテロ行為と武力報復の悪循環を生み、一般住民の犠牲者を増やすだけで解決にはつながりません。報復戦争への支援をやめ、法の裁きでテロを根絶する道にすすむべきです。
戦火は広がるばかり
米軍は報復戦争を開始してから一カ月でタリバン政権を倒したもののテロ勢力を一掃するどころか、アフガニスタン全土が開戦後最悪の戦争状態になっています。アナン国連事務総長は安保理事会に出した報告(九月二十一日)で、「アフガニスタンがこれほど厳しい脅威にさらされている時期はない」「南部、南東部、東部の状況は近い将来改善される見通しはない」とのべました。
事態を最悪にしているのは、米軍が多くの一般住民を犠牲にして軍事攻撃を強行しているからです。米軍は空爆や戦闘部隊の家屋急襲などの掃討作戦で住民被害を増やしてきました。開戦直後は約四千人、犠牲者はその後も増え、昨年は千五百人以上(人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」)となっています。今年は犠牲者がさらに激増することは確実視されています。米軍への住民の恨みはつよまるばかりです。そのことがテロ勢力につけいるすきを与え、勢いづかせる要因になっています。戦争ではテロ勢力を一掃できないことは事実が示しています。
米軍は一万人でパキスタンとの国境地域で掃討作戦を継続するとともに、NATO(北大西洋条約機構)を中心にした治安維持のための国際治安支援部隊に米軍と同じ軍事作戦を分担させ、軍事攻撃をアフガニスタン全土でつよめています。これではアナン事務総長がいうように事態を改善できないのは当たり前です。
日本はこうした報復戦争を、インド洋での米軍艦船などへの補給支援や在日米軍基地からの物資空輸でささえてきました。インド洋では、米軍艦船などに艦船用燃料六百七十八回、艦艇搭載ヘリコプター用燃料四十九回、水七十七回もの補給を実施しています。金額では約二百億円にのぼります。これらの支援が、アフガニスタンの一般住民にたいする軍事攻撃をささえ、事態の悪化につながってきたのはあきらかです。
自衛隊部隊が米軍艦船などにおこなっている燃料や水の補給行為は、NATOが集団的自衛権の行使として実施しているものです。佐久間一元統合幕僚会議議長も「米国にたいする攻撃にたいして集団的自衛権を根拠とした行動をとったと、国際的にはみなされる」とのべています。集団的自衛権の行使は憲法が禁止しています。憲法九条違反をこれ以上続けるのは許されません。
憲法改悪を許さない
ブッシュ政権の「対テロ戦争」路線は、アフガニスタンでもイラクでも国際社会の批判を受け矛盾を大きくしています。憲法で戦争を禁止した日本がこんな不法な戦争に加担・協力するなど許されません。
アメリカいいなりに憲法を改悪し、日本を「戦争をする国」に変えるくわだてに反対する運動をさらに大きくすることが重要です。