2006年10月18日(水)「しんぶん赤旗」

北朝鮮問題 どうみる、どうする

CS放送「各党はいま」

志位委員長の発言から(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は、十七日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、北朝鮮の核実験問題や安倍晋三首相の中国、韓国訪問などについて、朝日新聞の梶本章論説委員のインタビューに答えました。北朝鮮の核実験をめぐる志位氏の発言(大要)は次のとおりです。


憲章四一条に基づく平和的・外交的解決求めた国連安保理決議

 ――北朝鮮の核実験に対する共産党の態度はどういうものですか。

 志位 厳しく抗議する声明を出しました。同時に、国際社会の対応として、二つの原則――(1)国際社会が一致結束した対応をすること(2)平和的・外交的な解決をはかること――が大事だということを主張してきました。

 今度の国連安全保障理事会決議を見ますと、まさに全会一致で、国連憲章第七章四一条に基づく非軍事的措置、平和的・外交的解決をはかるという内容の決議があげられました。

 私たちはこれを支持し、これが実現できるよう、とくに北朝鮮政府がすみやかに決議を受け入れるべきだということを強く求めていきます。

 ――なぜ北朝鮮は強硬手段に訴えたと分析していますか。

 志位 核兵器を持つことが自分たちの安全につながるという考え方に基づいていると思います。かれらは「先軍思想」といいますが、強い軍事力、「抑止力」を持つことが安全につながるということをさかんにいいます。

 しかし、それは逆に北朝鮮の安全保障にとっても、危険な道になるわけです。北朝鮮の安全保障の何が問題かといえば、強い軍事力を持っていないことではなく、国際的な無法行為をやっていること、あるいは世界のルールを守らないこと、だから近隣諸国とのまともな外交関係がないこと、そこに問題があるわけです。そこをこそきちんとただすべきです。

 ――国連憲章の七章と四一条に基づく決議になりましたが、七章には四二条の軍事的措置も入っています。決議は両者の妥協という面があるのではありませんか。

 志位 決議の文面からすれば、「第四一条に基づいて措置をとり」とはっきりのべられていますし、わけても「外交努力を強め、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎み」と外交努力による解決を明記しています。決議が強く求めているのは、六カ国協議への即時無条件復帰、つまり外交的な枠組みのなかで解決をはかるというところに北朝鮮は戻りなさいということです。ですから、第四一条と第四二条の折衷というのではなく、四一条のもとでつくられた決議だということをはっきりみておく必要があります。

「周辺事態法」の発動は、平和的解決をめざした安保理決議に真っ向から反する

 ――四一条でも経済制裁となると、貨物検査、船舶検査もそのなかに入ってきます。

 志位 決議そのものには、それについて、非常に抑制的に書かれていると思います。

 現実に起こっている問題で非常に重大なのは、それを「根拠」にして、日本が「周辺事態法」を発動する動きが、麻生太郎外相などから公然と言われ始めていることです。

 「周辺事態法」は、米軍と自衛隊が海外での軍事的な共同をやるという枠組みです。これは船舶検査だけでなく、米軍が実際に戦闘行為をやり、それを自衛隊が兵たん支援をするという枠組みです。ですから、軍事の共同の枠組みです。

 今度の国連決議を「根拠」にして、「周辺事態法」をひきだすというのはまったく間違っています。今度の国連決議は、非軍事で、「兵力の使用を伴わない措置」(国連憲章第四一条)で、物事を解決するというのが趣旨です。そのときに、「周辺事態法」という日米が海外で軍事的共同をする法律を発動するというのは、安保理決議に真っ向から反しています。やるべきではありません。

 決議には「外交努力を強め、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎み」とあります。緊張を激化させるメッセージを日本の側から起こすことは厳に慎むべきだということを、安保理決議との関係でも、強くいいたいと思います。

 ――北朝鮮は制裁には対抗措置をとるといっています。

 志位 せっかく非軍事的措置で解決しよう、外交的・平和的に解決しようという決議が全会一致であがったにもかかわらず、それに逆行する措置が出て、軍事対軍事のエスカレーションが起こり、事態が危険な方向に行くことは、いちばん避けなければいけないことだと思います。

 いま各国がやらなければならないのは、この決議に示されているように、経済的な制裁措置の厳正な実施をおこなう。そして外交努力によっていかに事態を前向きに打開していくかというところにいちばんの心血を注ぐべきだと思います。

 ――確認ですが、国連の制裁決議には船舶検査はできると書いてありますが。

 志位 書いてありますが、「必要に応じて」とあるし、「自国の権限と法律に従い」とあり、また「国際法にそって」ともあります。そして義務的ではなく「要請される」とあります。非常に抑制的に書かれています。何よりもこれは、憲章四一条――非軍事的措置の枠内のものです。そこをよくくみとるべきです。

 そこからすぐ、日米の軍事的共同、「周辺事態法」の発動、さらに新しい特別立法という軍事的対応にいくのは、国連決議に反していると思います。

 ――六者協議(六カ国協議)がゆきづまって、今回の事態になりました。六者協議の場に戻れるのでしょうか。

 志位 決議は、六者協議に戻ることを大きな目的にすえ、制裁はその手段としてのべられています。制裁は、それ自体が自己目的ではなくて、北朝鮮が核兵器と核開発計画を放棄する、六者協議という外交的な場に戻る手段として位置づけられているわけですから、それを追求すべきです。

 また、六者協議以外にも、さまざまな二国間協議を世界各国がおこなうことは、外交的努力として当然、決議が要請するところでもあります。

“核武装議論”発言――被爆国として許しがたい言語道断なもの

 ――北朝鮮の核実験に対し、日本も核武装するのではないかとの懸念が出ています。安倍首相は「非核三原則」を守るといいますが、自民党の中川昭一政調会長は議論は必要だと発言しました。

 志位 「議論が必要」ということは、「非核三原則」の見直しはありうるということですから、核武装の選択肢を議論しようということにほかなりません。許しがたい言語道断な発言だと思います。

 さっそく発言が世界中に伝えられ、日本に対する懸念と批判を呼んでいるわけです。それを非常に重く受け止めるべきだし、あの発言はほんとうに許されません。

 北朝鮮が核実験をしたことにたいして、いかに国際社会が足並みをそろえてそれをやめさせていくか、北朝鮮に核放棄をさせるかといっているときに、日本も核兵器を持つことを選択肢として議論しようという動きが始まったら、それこそ今度の国連決議の精神を、日本から崩すことになるし、日本は根本から大義を失うことになります。

 日本は唯一の被爆国として、「非核三原則」の堅持はもとより、地球的規模の核兵器廃絶のための役割こそ果たさなければなりません。核兵器保有国が増える動きが起こっているのは、根っこは、特定の国が核兵器を持っているという体制があるわけですから、大本から全世界の核兵器をなくすというところでイニシアチブを発揮しなければなりません。それをなすべきはずの日本のなかから、与党幹部の発言として、核武装議論をいう発言が起こってくるのはほんとうに言語道断です。唯一の被爆国の与党として、あるまじき態度です。


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