2006年10月18日(水)「しんぶん赤旗」
「生命はたんぱく質の存在の仕方である」とは?
〈問い〉 不破哲三社会科学研究所長が、ことし5月25日に北京の社会科学院でおこなった講演のなかで、「生命とはたんぱく質の存在の仕方である」と言っています。これは、どういう意味ですか? 「炭素生物」という言葉も聞いたことがありますが。(静岡・一読者)
〈答え〉 不破氏の講演で引用されているのは、科学的社会主義の創設者の一人であるフリードリヒ・エンゲルスの著作『反デューリング論』にある次のような一文です。
「生命とは、蛋白(たんぱく)体の存在の仕方である。そして、この存在の仕方で本質的に重要なところは、この蛋白体の化学成分が絶えず自己更新を行なっている、ということである」(科学的社会主義の古典選書『反デューリング論・上』118ページ)
多種多様な物質の新陳代謝によって生命は維持されていますが、その過程の一つひとつの化学反応が、反応ごとに決まったタンパク質(酵素)によって担われています。また、たとえば筋肉が力を出すのも、蛍などが光るのも、タンパク質の作用です。これらのタンパク質は、すべてDNAと呼ばれる分子の中にあるタンパク質の設計図によって構造が決められます。これが「遺伝子」です。
エンゲルス自身が「蛋白体の化学的組成がまだほとんど知られていない」と書いているように、当時はまだ、生命現象に関係するさまざまな分子の構造も、それらの物質がつくられる仕組みもわかっていませんでした。そのため、「蛋白体」という大ざっぱな言い方をしていますが、こうした物質の作用(今日の用語でいえば化学反応)に生命現象の本質があることを、エンゲルスは指摘し、物質一般の法則とは別の法則(神や霊の作用も含めて)によって生命現象は成り立っているという考え方を退けたのです。
タンパク質やDNAを含め、生物を形づくる物質の多くは有機化合物(炭素をふくむ化合物)です。炭素原子はお互いにつながりあって長く伸びた分子をつくることができるという性質があり、多種多様な分子構造を持つ有機化合物が存在しています。この炭素原子の性質によって、生命現象を担う物質の多様性が可能になっているのです。地球上の生物が「炭素生物」であるというのは、このことを指した言葉です。(哲)
〔2006・10・18(水)〕