2006年10月21日(土)「しんぶん赤旗」

いじめ解決妨げる「数値目標」

「ゼロ報告」促す仕掛け

衆院委 石井議員の質問


 子どものいじめ自殺事件で改めて学校・教育行政の対応が問題になっています。

 二十日の衆院文部科学委員会で日本共産党の石井郁子議員がとりあげたのは、学校がいじめの存在を隠す背景に「いじめ半減」など教育委員会の数値目標による締め付けがあることです。

実態離れた統計

 文部科学省の統計では、公立学校でのいじめは一九八五年の十五万五千件をピークに年々減少し、九〇年代以降はほぼ二万件台で推移し、二〇〇五年度は二万一千六百件です。この数字が実態からかけ離れていることは教育関係者の間ではいわば常識でした。

 中二男子が自殺した福岡県筑前町の中学校では、ここ数年七、八件のいじめがあったにもかかわらず、校長は教育委員会に報告していませんでした。北海道滝川市の小六女児のいじめ自殺では、市教委が女児の遺書を隠していました。

 石井氏が隠ぺいの構図を示す実例としてあげたのが、今年度の新潟市教育委員会の学校評価資料です。

 同市教委は「いじめ・不登校の減少」をめざす年度当初の数値目標に「いじめ発生件数が0件」を学校に掲げさせています。いじめの評価基準も「A0件。B1件(解決済み)。C2件(解決済み)。D未解決あり」となっています。

 石井氏は「目標に、いじめ発生件数を0件としないと教育委員会からつき返されるという。九月末と年度末評価も0件のAに〇をつけて提出するとなっている」と指摘しました。

 石井氏はさらに教育委員会の指導主事が学校訪問の際に学校が提出する新潟市の「学校訪問資料」を示しました。ここでも、先の数値目標に合わせて「いじめ」件数は全学年ゼロになっています。

 ここからわかるのは、無理な数値目標による上からの管理で、いじめの実態が見えなくなっている問題です。

中教審答申から

 なぜこのような教育行政が行われるのでしょうか。

 おおもとに教育基本法の改定を求めた〇三年三月の中央教育審議会(文科相の諮問機関)答申があります。同答申は教育施策について「できる限り数値化するなど達成度の評価を容易に」するとしています。そのうえで、具体例として「いじめ、校内暴力の『五年間で半減』」もあげています。

 これを受け新潟県では「不登校を三年間で半減する」ことをかかげました。福岡県でも不登校について数値目標を設定し、「いじめについては『一件もあってはならない』との基本スタンスで根絶をめざす」としています。

 伊吹文明文科相は「目標は持たなければならない。自分はいかにもうまくやったように表現する人に問題がある」と述べ、数値目標が虚偽報告を事実上奨励している実態から目をそむけました。

 石井氏が「こういう目標設定に無理がある。(大臣は)いじめや不登校の問題の性質をまったく理解していない。一つ一つの事例の解決を支援するのが行政の役割だ」と指摘したように、いじめ、不登校問題にふさわしい対応が求められています。(北村隆志)


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