2006年10月24日(火)「しんぶん赤旗」
製造業で横行する偽装請負
背景に経団連の規制緩和要求
大企業の製造現場で受け入れ企業が指揮命令して請負労働者を使う違法な偽装請負が社会問題化しています。労働法制の規制緩和が無法の横行をもたらしました。この規制緩和を繰り返し要求してきたのが日本経団連です。同会の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は、経済財政諮問会議の席上、さらなる法改定を要求しています。
製造現場への労働者派遣が解禁されたのは二〇〇三年六月の労働者派遣法の改定でした。正社員を派遣社員に大規模に置き換え、企業のコスト削減を狙ったものです。
改定に先立つ〇二年一月、すでに経団連は政府への規制緩和の要望の中で派遣対象業務の拡大を要求していました。その理由に「企業の雇用ニーズの多様化」を挙げていました。
同会は〇一年十二月から〇二年一月にかけ、会員企業を対象に「雇用の現状と制度改革に関する緊急アンケート調査」を実施していました。「緊急を要する雇用関連規制」の項目で最も多かったのが「労働者派遣法における派遣対象業務、期間の見直し」で、大企業の七割が要求。つまり、製造業への派遣の解禁です。
同アンケートには派遣労働の「活用」のメリットとして、大企業の約八割が「人員の整理が比較的容易」なことを挙げ、「人件費の削減」のためとする大企業は六割近くに上っていました。大企業にとって「使い捨て労働者の拡大」を狙ったのは明らかです。
派遣法の改定による製造現場への労働者派遣の解禁は、松下電器産業やキヤノンなど日本の名だたる大企業製造業で問題になった偽装請負を横行させる促進剤になりました。
御手洗会長の会社であるキヤノンは偽装請負問題で労働者から告発されています。ところが安倍政権のもとで開かれた経済財政諮問会議の初会合(十三日)の席で、御手洗氏は、請負にかかわる法制の改定を求めると同時に、派遣法が定める派遣期間の制限が労働コストの硬直性を引き起こすとして、さらなる派遣法の見直しを要求しました。その理由について経団連の〇六年度の「規制改革要望」では、次のように明記されています。
「国際的な企業間競争の激化や経済動向の急激な変化に企業が対応するためには、期間の問題に制限されない多様な雇用ポートフォリオ(組み合わせ)の実現が有効である。派遣期間の制限は、専門性を持った優秀な労働者を確保するために派遣労働者を活用している企業の妨げになる」
経団連の要求のように派遣期間制限を撤廃すれば、労働者の使い捨てにさらに拍車をかけ、格差の拡大を招くことは必至です。
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偽装請負 請負はメーカーが請負会社に丸ごと業務を任せる契約です。メーカーは労働者の使用責任を負わず、直接雇用の義務も生じません。しかし、メーカーが請負会社の労働者を指導・監督すれば違法な偽装請負になります。