2006年10月26日(木)「しんぶん赤旗」
靖国神社は一宗教法人ではないのか?
〈問い〉 靖国神社は一宗教法人ではないのでしょうか? 神社の紋章が皇室と同じ菊なのはなぜですか?(秋田・一読者)
〈答え〉 靖国神社は「勤皇の志士」「官軍の戦死者」をまつる神社として創建され、1879年(明治12年)に国家神道の格式では特別という意味の別格官幣社靖国神社となります。戦後1945年12月15日に日本を占領した連合国軍総司令部が「神道指令」を発するまでは、現人神(あらひとがみ=生き神)の天皇が、天皇のために戦死した人びとなどを「英霊」と呼ぶ祭神に認定し、陸軍省と海軍省によって管理される神社でした。
「神道指令」は「神道の教理ならびに信仰を歪曲(わいきょく)して日本国民を欺き侵略戦争へ誘導するために意図された軍国主義的ならびに過激なる国家主義的宣伝に利用するがごときことの再び起ることを防止するため」に国家神道の解体を指示し、天皇は信教の自由と宗教団体の自主性を認めた宗教法人令を公布します。これをうけて靖国神社は宗教法人靖国神社となります。
ところが、「神道指令」直前に、靖国神社は「英霊」を特定しないで、不明の戦死者全部を祭神とする臨時大招魂祭をおこないました。そのため、その後に判明した戦死者名簿などを厚生省引揚援護局などから提供され、祭神を増やし続けてきたのです。引揚援護局の中枢には旧陸海軍出身者がすわり、靖国神社との特別な関係を維持してきました。そこに法的根拠があるわけではなく、厚労省は「戦死者名の問い合わせには応じている」という言い逃れで靖国神社と癒着し、特別な関係を続けてきています。
一宗教法人にすぎない靖国神社の紋章が皇室同様の菊紋になっているのは、天皇の神殿という意味を今も示そうとしているのです(厳密にいえば多少の変化を付けて皇室とまったく同じ紋章ではありません)。(平) 〔2006・10・26(木)〕