2006年11月4日(土)「しんぶん赤旗」
自衛軍と自衛隊はどうちがう?
〈問い〉 与党・自民党の「新憲法草案」に「自衛軍」が明記されています。いま存在する自衛隊と自衛軍は、どんなふうにちがうのですか?(大阪・一読者)
〈答え〉 自民党「新憲法草案」(05年10月28日発表)は、「戦力の保持」と「交戦権」を禁止した憲法第9条2項を削除し、代わって「自衛軍」を保持することを明記しました。
歴代自民党政府は、第9条1項、2項があること、国民世論が9条が平和に役立っているとして支持していることから、「自衛隊を軍隊ではない」と言わざるをえませんでした。そのことによって、「自衛隊は海外での武力行使はできない」としてきたのです。そのためにイラク派兵にあたっても、小泉前首相は「自衛隊は戦争に行くんじゃない。人道復興支援のために行くんだ」と繰り返しました。
いまや日本の軍事費は米国とその同盟国のなかで第二位となり、自衛隊は「世界で最も能力の高い軍隊のひとつである」(イギリス国際戦略研究所のクローニン研究局長)と評されるほど、世界でも有数の軍隊となっています。このように、すでに軍隊の体をなす自衛隊を「軍」とすることは、大規模な軍備や核兵器保有などの戦力についての制約、「合理的に必要と判断される限度」(自衛隊法第88条)などという武力行使に関する制約をいっさい取り払うことになり、まさに制約のない、世界で最も能力の高い軍隊になります。
さらに草案には「国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調しておこなわれる活動…をおこなうことができる」と明記されています。
これは自衛軍が「国際貢献」の名のもとに、公然と米軍と一体となって、地球上のどこにでも軍事力を行使できることになります。
安倍首相は5年以内に憲法改正をおこなうとしていますが、現行憲法のもとにおいて、解釈改憲で集団的自衛権を行使できる事例を検討することを表明しています。米軍支援のためなら、改憲を待たずに、いつでも自衛隊を活用することをたくらんでいます。
また、政府は今国会で海外派兵を「本来任務」に格上げし、防衛庁を「防衛省」に移行させるための自衛隊法や防衛庁設置法改悪案を成立させようとしています。これらは、米軍と一体となった自衛隊の海外派兵態勢づくりを新たな段階にすすめるもので、米軍と海外で戦争する「自衛軍」になるためのステップとしてねらわれています。(竹)
〔2006・11・4(土)〕