2006年11月5日(日)「しんぶん赤旗」
主張
大銀行の献金再開
「社会貢献」を言うなら
ごく最近まで巨額の「不良債権」を抱え、公的資金で助けてもらった大銀行が、異常な低金利とリストラで経営が改善した途端に自民党などへの献金再開を検討しています。
公的資金を返済したというのがその口実ですが、大銀行は一円の法人税も納めていません。預金者と労働者にさんざん迷惑をかけたあげく、最初に政治献金を再開するというのはとんでもない話です。
法人税1円も納めず
全国銀行協会は、日本経団連から献金再開の要請を受け、全国の銀行に伝えました。これは銀行業界ぐるみの献金あっせんです。
大銀行が公的資金の返済を免罪符のように考えているとしたら大間違いです。国民の財産である公的資金を返済するのは当然であり、企業の資金力で政治をゆがめる企業献金が免罪されるわけではありません。
政府は九〇年代後半から、三十兆円以上の公的資金を銀行に投入し、そのうち十兆円以上が国民負担として確定しています。
公的資金の直接投入のみならず、銀行には産業再生機構、株式買取機構による応援、超低金利政策での利ざや確保、減税など至れり尽くせりの経営支援策が講じられています。これらはすべて、国民の税金や預金利息の裏づけで成り立っています。
こうした優遇措置で利益を回復した銀行業界が献金すれば、結局、公的資金、血税を政党に還流させることにつながらざるを得ません。
三菱UFJグループの畔柳(くろやなぎ)信雄社長(全銀協会長)は、「企業献金は重要な社会貢献」だということを「よく勘案して検討する」とのべています。これはまったくのまやかしです。企業献金は見返りを求める利益誘導であり、政党の骨折りに対する報酬です。もうけのために金で政治をゆがめることを「社会貢献」と呼ぶのは厚かましすぎます。
大銀行は犠牲を中小企業に押しつけ、大企業の収益回復の追い風も受けて「不良債権」を大幅に減らし、昨年度の利益は過去最高の三兆円を記録しています。それでも「欠損金の繰越控除」という優遇税制で法人税は一円も納めていません。
「社会貢献」を言うのなら、少なくとも法人税を払うことです。中小企業へのしわ寄せをやめ、まともな預金利息を付け、金融の公共性を支える銀行本来の社会的責任を果たして、国民に奉仕することです。
銀行に献金再開を求めた経団連は身勝手な「優先政策事項」を掲げ、それに自民、民主両党がどれだけ忠実に従い実行したかの「通信簿」をつけ、献金をあっせんしています。
「優先政策事項」には大企業向け減税、消費税の増税、社会保障の削減、九条改憲を求める項目など財界本位の要求が並んでいます。政党の政策そのもの、政党そのものを丸ごと買収する最悪の金権政治です。
企業献金は廃止を
銀行業界はかつて、建設・不動産など「献金御三家」と呼ばれた業界の筆頭の座を占めていました。
日本経団連は「献金御三家」トップの復活で金権パワーをさらに強め、世論の反対が強い消費税増税、法人税率引き下げなどの財界要求を政党に実行させようとしています。銀行業界は法人税の納税ゼロでも飽き足らず、税金払い戻し(欠損金の繰り戻し還付)まで求めています。
献金再開で政治を買収しようという財界・大銀行の狙いは露骨です。国民の利益に反する大企業中心政治の推進力である企業献金は広げるのではなく直ちに廃止すべきです。