2006年11月6日(月)「しんぶん赤旗」

人情対談 平和が一番

海老名香葉子さん

空襲で燃えた東京 兄と私は孤児に

笑うことできる平和残す

市田忠義さん

多くのプロ野球選手も戦死した

無念の思いつまった九条


 赤旗まつり最終日の五日に行われた、日本共産党書記局長・市田忠義さんとエッセイスト・海老名香葉子さんの「人情対談―平和がいちばん!!」。何よりも平和を愛し、庶民の暮らしを大切にする二人の思いが会場にもじんわりと広がり、参加者は笑ったり、涙ぐんだりしながら、対談に聞き入りました。


写真

(写真)中央舞台で語りあう海老名香葉子さん(右)と市田忠義書記局長(中)。左は司会の大内田わこさん

 司会の大内田わこ・「しんぶん赤旗」編集局次長による二人の紹介のあと、市田さんが亡くなった落語家・林家三平さんの記念館「三平堂」と海老名さんの自宅を訪ねたときの写真がスクリーンに映し出されました。

 市田さんと海老名さんが初めて出会ったのは、二年前に埼玉県で開かれた革新懇の講演会。「海老名さんが、戦争の体験を淡々と話す姿が聞く人の胸を打って、私も大のファンになってしまった」と印象を語る市田さん。「落語家のおかみさんらしく、合間に小話が入るんですよね」と話をふると、海老名さんは「パンツ破れたよ。またかい」。左手を頭にあてて「すいません」と、三平さんのおなじみのポーズで会場の笑いを誘いました。

 話題は、二人の平和への思いに。スクリーンには、二〇〇五年三月九日に行われた、東京大空襲の犠牲者の碑の除幕式の様子が映し出されました。海老名さんが東京大空襲の悲劇を後世に伝えようと、建立のために努力したものです。

 「初めはとても無理だと思っていましたが、ようやく悲願がかないました」と話す海老名さん。除幕式に参加した市田さんは、「あの悲惨な戦争を繰り返さないために力をつくすことが、現代に生きる私たちの責務だと思います」とあいさつしたことを紹介しました。

 司会の大内田さんの「改めて戦争の体験をお聞かせください」との問いかけに、海老名さんは時折声をつまらせながら、こう語りました。

 「三月十日、東京大空襲の日は、とても寒い日でした。疎開先の静岡・沼津から東京の空が赤く染まっているのを見て、涙がポロポロこぼれました。この大空襲で孤児になりました。敗戦後は、今日を生きるのがやっとでした。戦争中は笑うことさえできなかったんです。もう二度とあんな思いはしたくない。私のようなかわいそうな子をつくらないでほしい」

 参加者はじっと話に聞き入り、ハンカチで目頭を押さえる人の姿も。

 海老名さん「今は家族みんなで笑うことができるようになった。こんな幸せなことはない。どんなことがあっても、二度と戦争がないように、みんなの力で憲法九条を守っていきたい」

 市田さん「私は野球が大好きですが、戦前のプロ野球選手で戦死した人が、私の調べたところ百四十人くらいいることがわかりました。憲法九条には、つらい体験をされた海老名さんや野球を続けたかった選手など、大勢の無念の思いが凝縮されている。なんとしても守り抜かなければならない」

 平和を誓った憲法九条を守り抜く決意を二人が語ると、参加者は大きな拍手でこたえました。

市 田さん 無法労働やめさせる

海老名さん みんな平等の社会に

 話題はくらしのことへ―。

 「市田さんが“もうだまっていられない”の気持ちをぶつけたのが、いまの働かせ方の問題です」(大内田さん)と紹介されたのが十月十三日の参院予算委員会の質問。スクリーンに「ワーキングプア」「偽装請負」問題をとりあげた場面が映し出されました。

 市田さんが、まじめに働いても貧困から抜け出せない世帯が四百万世帯もあり、給与も正社員の半分、社会保険も加入させてもらえないワーキングプアの実態を語り、非正社員は大企業では人事課ではなく、資材課、物品課が扱うと紹介するとどよめきがおきました。

 「人情とか人の助け合いなんてあったもんじゃない」と市田さん。安倍首相が“ワーキングプアを前提にした生産は大問題”“偽装請負など法律違反には厳正に対処する”と答弁したことは重要だとのべました。

 この答弁に日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)が“法律が窮屈、もっと規制緩和を”と真っ先に反応したことを紹介。「首相の言葉通りに約束を果たしてもらおうじゃないですか」と語ると「そうだ」の声があがりました。

 海老名さんも「笑うことのできない苦しい生活ではなく、みんなが平等に笑えるようにしてほしい」と応じました。

 市田さんが職場でも国会でも、非人間的働かせ方をやめさせよの声を大きくさせることが大事だとのべ、「額に汗して働く人があたりまえに報われるような、お年寄りや障害者に光をあてるのが政治の責任」「暮らしから笑いが絶えず、安心して落語を聞きにいけるようにならないと、林家正蔵さん(海老名さんの長男)の仕事もあがったり。落語や音楽など、文化の発展にもつながる問題」と話すと会場は歓声につつまれました。

 対談の最後に二人は、「平和」への思い、次の世代に伝えたい思いを色紙に次のように書きました。

 海老名さん

 「いまの平和をしみじみと」

 市田さん

 「真実一路」

 海老名さんは「朝、昼、晩とごはんが食べれて、家族いっしょ、お風呂にも入れて、靴下もはける…。こんな毎日、ありがたいとしみじみと思う。だから、憲法九条をどうしても守っていきたい」。市田さんは「海老名さんは誠実にひたむきに、平和の語り部としてまっすぐに生きている。共産党もどんな迫害にも屈しないで、まっすぐに、一筋にたたかってきたという思いを込めた」。

 二人の対談が終わるのを惜しむかのように、長く続く拍手が会場をつつみました。

“私も頑張らなければ” 参加者

 東京都豊島区の女性(71) 私も海老名さんと同じで十歳のとき終戦で、戦中は縁故疎開で苦しい思いをしました。そのことを思い出しながら、空を見上げると青空に浮かぶアドバルーンの要求を見て、二度と平和を失うことのないよう、憲法、教育基本法を守るために私もがんばらなければと思いました。

 東京都江東区の女性(36) 知り合いや友達の働かされ方を見ているとサービス残業のことなど、働いても働いても貧困から抜け出せないワーキングプアの市田さんの指摘は共感を覚えました。庶民の暮らしの目線で語ってくれて分かりやすかった。


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