2006年11月8日(水)「しんぶん赤旗」

主張

政府税調

逆立ち税制いっそうひどく


 政府税制調査会が七日、新体制で初の総会を開き、本間正明大阪大学教授が正式に会長に就任しました。

 就任前の記者会見で本間氏は、大企業減税のため、法人税と法人事業税を合わせた実効税率を現在の約40%から「30%台にどうもっていくか」が課題だと明言しています。

 安倍首相は同日の政府税調への諮問で、喫緊の課題は国際競争力の強化だとのべ、大企業減税にお墨付きを与えました。

大企業負担は重くない

 政府は税調の体制も見直し、委員を大幅に入れ替えました。法人税の追加減税に批判的な意見をのべてきた労組や自治体代表らを、税調の正委員から議決権のない「特別委員」に「格下げ」しました。

 大企業減税論者の尾身財務相の起用につづき、財界が要求している法人減税を、世論の批判を押し切って何が何でも強行するための体制固めです。

 同時に財界は、大企業減税の大盤振る舞いの後の財源不足を、消費税の増税で埋め合わせるよう求めています。どこまで税制の不公平を広げようというのでしょうか。

 政府は一九九九年度からの「恒久的減税」のうち、中低所得者向けの定率減税を廃止する一方、法人税率引き下げ、所得税の最高税率引き下げは継続しています。

 二〇〇三年度から実施した研究開発減税は、これだけでトヨタやキヤノンなど大手製造業の法人税率を6%下げる効果があります。他方で高齢者には課税を強化し、急激な負担増を押し付けています。

 所得の減少や不安定雇用に苦しめられている庶民には大増税、空前の大もうけをあげている大企業・大銀行には巨額の減税というのは、完全に逆立ちしたやり方です。

 本間会長は、法人税の実効税率を「欧州並み」に引き下げるとのべています。何かといえばアメリカを持ち出す政府や財界が、この問題ではアジアや欧州を引き合いに出すのは、アメリカの実効税率がニューヨーク州では日本より6%高いなど、比較すると都合が悪いからです。

 大企業の負担は法人税だけではありません。OECD(経済協力開発機構)によると、法人所得税と社会保障負担の合計で見れば、日本の企業負担はイタリアの三分の二、フランスの二分の一にすぎません。

 アメリカの大企業は公的な医療保険の負担は少ないものの、従業員のために民間の医療保険料を負担しています。これを含む保険料の負担率を比べると、日本の14%弱に対してアメリカは20%弱とかなり重くなっているのが実態です。

 日本の大企業の負担が重く、国際競争の足かせになっているというのは、財界がふりまく虚構です。

安倍内閣に抗議の声を

 本間会長は株式売買などの金融所得を勤労所得と完全に分離し、一律の低い税率で優遇する「二元的所得税」の導入に意欲を見せています。

 勤労所得と合わせて累進税率をかける「総合累進課税が基本」(税調中期答申、二〇〇〇年)としてきた建前をかなぐり捨て、金融所得を恒久的に優遇することになります。

 投機的な所得には軽く、勤労で得た所得には重く課税するのはまったくの本末転倒です。

 貧困と格差の拡大はますます深刻な社会問題になっています。庶民から大企業や大金持ちに所得を逆向きに再分配し、「逆立ち」税制をいっそうひどくしようとしている安倍内閣に、抗議の声を集中しましょう。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp