2006年11月8日(水)「しんぶん赤旗」
「人間の意識は脳髄の機能」とは?
〈問い〉 不破哲三社会科学研究所長が、中国社会科学院での講演で、「人間の意識とは高度に組織された物質である脳髄の機能である」とのべたのは、どういう意味ですか?(静岡・一読者)
〈答え〉 フリードリヒ・エンゲルスは、「われわれの意識とか思考というものは、それがどんなに超感覚的に見えようとも、物質的な身体的機関、つまり脳髄の産物なのである。物質は精神の産物ではなくて、かえって精神そのものが物質の最高の産物にほかならないのである」(科学的社会主義の古典選書『フォイエルバッハ論』38ページ)とのべています。「脳髄」とは、体の一部分としての脳(大脳、小脳、延髄など)のことです。
エンゲルスの時代には、物質ではなく精神が世界をつくると考える観念論の立場から、脳の役割を否定する議論もありました。医学の進歩とともに、このような主張をする人はいなくなっています。
人間の脳には約1兆個もの神経細胞(脳細胞)があり、それぞれが平均約1千個のシナプスと呼ばれる接続部分で他の神経細胞につながっています。この神経細胞とシナプスのネットワークが、脳の部位ごとに、感覚や運動、記憶などにかかわるさまざまな役割を分担しています。個々の脳細胞の機能は単純ですが、互いに複雑に絡みあうことで情報処理をおこなっています。そして、各部位の脳細胞の集団がおこなう情報処理が、さらに複雑に結合して精神活動をつくりだしています。人体で脳ほど複雑な役割分担をもった器官は他にありません。
10月18日付本欄でも説明したように、生物の活動を中心になって担う物質は、タンパク質とDNAです。この点では神経細胞も例外ではありません。細胞表面の静電気の変化で信号を送るという神経細胞特有の性質も、細胞表面のタンパク質の機能によってつくられています。
私たちの精神は、「タンパク質(=物質)の存在の仕方」である生物体の、もっとも高度に組織化された部分である人間の脳の活動です。そのことは「物質が精神に先立つ」という唯物論的な世界観の正しさを裏づけるものです。(哲)
〔2006・11・8(水)〕