2006年11月10日(金)「しんぶん赤旗」

主張

職場の無法

不払い残業と偽装請負なくせ


 職場にはびこっている、サービス残業と偽装請負という二つの無法の一掃は、社会がとりくむべき緊急課題となっています。労働者の告発と労働組合のとりくみ、日本共産党の国会での追及が、厚生労働省を動かし、世論を広げています。

利用大企業の責任

 サービス残業は、法定労働時間(週四十時間、一日八時間)を超える労働に支払われるべき割増賃金(25―50%増)を不払いにする、“賃金泥棒”です。明白な労働基準法違反であり、刑事罰のつく犯罪です。

 サービス残業根絶を求める日本共産党の国会質問は、一九七六年以来、二百四十回を超え、ついに、二〇〇一年四月、厚生労働省に通達を出させました。マスメディアは、日本共産党のねばりづよい国会質問が、「通達につながった」と評価しました。通達を活用して、以後の五年間で五千百六十一企業に、合計八百五十一億円を超える不払い残業代を支払わせました。

 偽装請負とは、実体は労働者を受け入れている製造企業が指揮命令している「派遣」なのに、「請負」を装うことです。製造大企業が、派遣なら生じる労働者の安全衛生義務と直接雇用の申し出義務を免れるために偽装請負を仕組んでいるのです。

 たたかいの出発点になったのは、キヤノン、日立、松下など日本を代表する大企業の工場で横行していた偽装請負を労働者が告発したことでした。日本共産党は国会で繰り返しとりあげました。

 九月一日、トヨタ系自動車部品メーカーの現場で、請負の形で働かされていた労働者たちが、直接雇用を実現させました。その直後の四日、厚生労働省は、製造大企業の多くにみられる偽装請負の防止・解消のための監督指導を強化するとの通達を出しました。一カ月後の十月三日、大阪労働局が、請負業最大手を自称する「クリスタルグループ」の「コラボレート」にたいして、偽装請負問題で初めての事業停止命令を出しました。

 利用大企業と政治の責任をただしたのは、日本共産党の市田忠義書記局長です。十月十三日の参議院予算委員会です。

 安倍首相は、利用企業にたいしても厳正な措置を講じると、こたえました。「いわゆる『ワーキングプア』と呼ばれる人たちを前提にしてコストあるいは生産の現状が確立されているのであれば、それは大変な問題」「法令、労働基準法に反しているのであれば、適切に厳格にこれは対応していかなければならない」

 政治の責任は重大です。労働者派遣法が成立して約二十年、製造業への派遣の導入が見送られてきたのは、製造現場に偽装請負が存在していることへの懸念からでした。ところが、政府と与党は、財界・大企業の要望にもとづいて二〇〇三年、製造業にも派遣を認める労働者派遣法改悪を成立させました。懸念されたように、法施行された〇四年を境に、製造業への派遣が十三倍になるとともに、派遣・請負の法違反率も倍増しました。派遣労働の製造業への解禁で、偽装請負がまん延しました。

二つの通達出させた力

 非人間的な働かせ方の土台に労働法制の規制緩和があったことは明らかですが、厚生労働省がだしたサービス残業と偽装請負にかんする二つの通達は、労働者の勇気あるたたかいで獲得した重要な成果です。人間らしい労働のルールを築くたたかいを前進させ、“二つの宝”を活用し無法の一掃に力をあわせましょう。


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