2006年11月15日(水)「しんぶん赤旗」
仏暦はあるの?
〈問い〉 世界には年代を数えるのに「キリスト紀元」や「イスラム紀元」などがありますが、仏教の紀元は聞いたことがありません。有るとしたら、どんなものでどのあたりで使われているのですか。無いとしたら理由は?(京都・一読者)
〈答え〉 仏教の開祖の釈迦(ガウタマ・シッダールタ=日本仏教では釈尊とか仏陀と尊称を使います)が没したことを仏教では入滅といいますが、入滅を紀元とする暦法は、仏滅紀元といって、仏教徒の多い東南アジア諸国で使われています。
日本でも仏暦を重んじている僧侶が書く位牌(いはい)などに使われる場合がありますが、一般化していないために手紙などでは西暦(キリストの生誕年といわれている年を紀元元年とする暦法)と併記することが多いようです。
仏暦には入滅を元年とする暦法とその1年後を元年とする暦法の2種類があります。どちらも入滅を西暦で紀元前544年としています。この釈迦没年は仏教伝承のなかで流布されたもので、入滅を元年とするか、1年後から数え始めるかも、ゼロの概念を知っていたインド文明の影響とか宗教的な解釈の違いとかの諸説があります。ちなみに現在の研究では釈迦の生存年代は、西暦でいうと紀元前463年生まれで同383年没年説が有力な学説です。これはキリスト生誕が西暦元年よりも数年前という現在の研究成果と同様です。
入滅を元年とする仏暦はスリランカやミャンマーなどで使われ、入滅1年後を元年とする仏暦はタイ、カンボジア、ラオスなどで使われているようですが、世界的な交流がすすんでいる現在ではこれらの国で西暦も通用しています。
全日本仏教会の機関誌『全仏』には、1年後の立場で仏暦が書かれ、西暦を添え書きしています。入滅1年後を元年とすれば、西暦に543(こよみ)を足すと仏暦になる、と語呂あわせでいわれます。日本の仏教徒のなかには、駄洒落(だじゃれ)のような計算方法をきらい、伝承された入滅年を元年として、今年は仏暦2550年とこだわる人もいます。(平)
〔2006・11・15(水)〕