2006年11月16日(木)「しんぶん赤旗」
安倍内閣がねらう集団的自衛権とは?
〈問い〉 集団的自衛権とはなんですか? 安倍内閣になって、集団的自衛権がまたよくいわれるようになっていますが、よくわかりません。(福岡・一読者)
〈答え〉 安倍晋三首相は国会の所信表明演説(9月)で、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使について「個別具体的な例に即し、よく研究していく」と述べ、容認に向け検討を進める方針を明らかにしました。
集団的自衛権とは、政府の定義によると、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されてもいないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」です。政府は「わが国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず、外国のために実力を行使するもの」であり、「憲法9条のもとでは行使は認められない」(04年1月26日、衆院予算委員会、秋山收内閣法制局長官)としてきました。
集団的自衛権とは、政府の見解からしても、日本が外国から侵略や攻撃を受けた場合の「自衛」権ではなく、「外国のため」に海外で武力を行使する「他衛」権というべきものです。安倍首相は、それを可能にしようとしているのです。
安倍首相が「研究」するとしている「個別具体的な例」とはどういうケースでしょうか。
安倍首相は自民党総裁選で、集団的自衛権の研究について「日米同盟をより効果的に機能を向上させ」、「双務性を確保していく」ためと述べてきました。具体的には、▽公海上に自衛隊と米軍の艦船が一緒にいて米軍艦船が攻撃を受けた時に自衛隊艦船は反撃できないでいいのか▽イラクで他国の軍隊が襲撃された時に自衛隊は援護に行けなくていいのか―といった例を挙げてきました。
つまり海外で戦争を起こした米軍とともに、自衛隊がインド洋やイラクで活動している際、米軍への攻撃を口実に武力行使ができるようにしようというのです。背景には「日本がアメリカと対等なパートナー同士として共同活動をするには、日本も…集団的自衛権を行使できる状態にないと、実際に支障がある」(アーミテージ前米国務副長官、『Voice』九月号)という、米国の圧力があります。
安倍首相は最近、外国メディアのインタビューで、憲法9条は「時代に合わない」などとして明文改憲を任期中に達成したいと明言しました(10月31日)。狙いは、自衛隊が海外で米軍とともにいっそう本格的な武力行使に乗り出すことです。米国の中間選挙では、ブッシュ政権が強行したイラク戦争が痛烈な「ノー」の審判を受けました。米国の先制攻撃の戦争に付き従い、日本を「海外で戦争をする国」にすることは許されません。(榎)
〔2006・11・16(木)〕