2006年11月22日(水)「しんぶん赤旗」
国交省・公益法人の違法
偽装請負なぜ起きた (上)
河川や道路管理も委託
「官から民へ」の体質根深く
偽装請負が社会問題になっています。実態は派遣労働でありながら、請負労働者として労働させ、労働者保護法制の「束縛」から逃れて、労務費を大幅に減らそうとする電機・自動車など大企業で急増しています。先の参院予算委員会でも日本共産党の市田忠義書記局長が、受け入れ側企業の公表をしぶる政府を厳しくただしました。
国が国の指導受け
ところが、この違法な雇用形態が公共事業の執行官庁である国土交通省で、長期にわたり、しかも大量に行われ、労働者に不利益をもたらしていたことが明らかになり、十月二十五日の衆院国土交通委員会で穀田恵二議員がその是正と問題の解決を求めました。
国交大臣は「国の機関が国の機関から指導を受けたまことに遺憾なこと」と答えました。しかし偽装出向・請負を生んだ背景には、「官から民へ」の方針の下に正規の公務員を減らし、外注化や民間委託を広げる同省の根深い姿勢と体質があります。
また、景気対策という名目とアメリカによる強い要求を受け入れ一九九〇年代に公共事業を急増させてきた政府の政策とも密接なかかわりをもっています。
いま国土交通省職員の定員は、政府の削減計画で最も多かった一九六〇年代の水準の67%程度。正規職員を増やさないため急増した公共事業の事業量を「消化」することができず、もっぱら業務委託を拡大してきました。
業務委託の内容も河川や道路の巡回や事業発注に当たっての積算業務や監督の補助業務にまで及び、二〇〇五年度には全国で千九百七十一件、金額にして七百二十三億円余に及んでいます。(国土交通省資料「平成十七年度 契約状況八建設弘済会」)
雇用形態は、全国に八つある国交省の出先機関である地方整備局に対応した公益法人の建設弘済会・建設協会が、民間コンサルなどから「出向」という形で労働者を受け入れ国交省から河川・道路の巡回などの業務を請け負い、その業務を民間コンサルなどから「出向」してきた労働者に行わせていました。
国土交通省の提出資料によると、各建設弘済会の正規労働者は合計二千二百六十八人、これに対して出向労働者は正規労働者の一・六倍の三千七百十二人に及んでいます。(〇六年一月一日現在)
これら出向労働者は建設弘済会を通して国から支払う業務委託費の半分以下しか賃金を受け取っていないこともこの間明らかになりました。
労働局が是正指導
東海地方の国交省の国道事務所では、公益法人の一つ「中部建設協会」に委託料として年間一人当たり約六百万円近く払っているのに、出向労働者には約二百五十万円しか支払われていないことも明らかになりました。
出向労働者は「実際は派遣だけで、他に経費はかかっていない。協会やコンサルタント会社にピンハネされているようなものだ」と話していることも報道されました。(朝日新聞中部版十月五日付)
こうした実態に労働局が一部メスをいれ、職業安定法四四条で禁止している労働者供給事業を行っている(偽装出向)、労働者派遣法二四条の2【労働者派遣事業の許可または届出を行っていない事業主から労働者派遣の役務を受けている】(「偽装請負」)にそれぞれ違反しているとして、整備局の地方事務所や建設弘済会などにいずれも是正指導が行われたのです。(つづく)
(国民運動委員会 高瀬康正)