2006年11月22日(水)「しんぶん赤旗」
「自律的労働時間制度」って?
〈問い〉 最近、「自律的労働時間制度」という言葉を聞きましたが、どういうことですか?(大阪・一読者)
〈答え〉 一言でいえば、どんなに残業をしても、いっさい残業代を支払わないようにする制度です。そのための労働基準法「改正」案が来春の国会にもだされようとしています。
米国の「ホワイトカラーエグゼンプション」をまねて、日本に導入しようと財界の強い要求で政府が検討してきました。
エグゼンプションとは、「除外する」という意味です。
労働基準法は、1日8時間、週40時間を超えて労働者を働かせてはならないとし、これを超えた場合、割増賃金を払わねばならないとしています。エグゼンプションとは、ホワイトカラーの一定部分についてこの労働時間に関する規制の対象外にしようというものです。
02年に政府の「総合規制改革推進3カ年計画」にもりこまれて閣議決定。日本経団連は05年6月に「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」を発表。厚生労働省は、エグゼンプションをふくむ労働法制の大改悪案の素案を、6月の労政審(労働政策審議会)分科会へ示しました。
「自律的労働時間制度」とは、いかにも自律的=自由に働けるような印象をもたせるために言い換えた言葉にすぎません。
厚生労働省が11月10日に示した「具体案」では、「自律的労働時間制度」という言葉が消え、今度は「自由度の高い働き方にふさわしい制度」が必要だと言い換えています。
「具体案」は、「労働時間の適用を除外する」対象を、(1)労働時間で成果を適切に評価できない(2)重要な権限・責任を相当程度伴う地位にある(3)業務遂行の手段や時間配分の決定に使用者が具体的指示をしない(4)相当程度高い年収―という、4要件を満たす労働者としました。
「日本版ホワイトカラーエグゼンプション」が導入されれば、労働者は何時間でも働かせられ、一円の残業代も払われません。労働時間に関係なく「成果」で評価する成果主義賃金とあいまって、際限なく働くことを余儀なくされます。
財界は、異常な長時間労働や違法なサービス残業で批判されることもなくなり、こんなうまみのある制度はありません。
労働総研の試算では、日本経団連が求める「年収400万円以上」だと、1013万人もの労働者が残業代支払いの対象外となり、残業代とサービス残業代あわせて11兆6千億円、労働者1人あたり年間114万円もの損失を被ります。(喜)
〔2006・11・22(水)〕