2006年11月25日(土)「しんぶん赤旗」

イラクの武装・テロ組織

4グループ 抗争激化


 血なまぐさいテロの応酬と抗争は各宗派・勢力のなかの一部の組織によるものです。これらの武装・テロ組織は大別して、イスラム教スンニ派、シーア派、クルド人の組織、それに国際テロ組織アルカイダとつながりがあるとみられるテロ組織があります。

スンニ派武装組織

 スンニ派の武装組織は米軍の占領に反対する当初の目的から、シーア派主導の政治体制を覆す狙いを持つようになっています。

 この組織は旧フセイン残党の元兵士や、米軍支配への抵抗を主な動機とする「民族主義」勢力など、さまざまです。スンニ派住民の自警団的組織もできています。

 米軍の直接統治下の二〇〇三年五月にブレマー米文民行政官が旧フセイン政権を支えたバース党員を排除する一環として、武装解除しないままイラク軍を解体したことが、旧フセイン政権残党の武装力強化をもたらしたとみられています。

シーア派二大組織

 シーア派には二大武装組織があります。その一つは、国民議会の最大会派イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の民兵組織バドル軍団です。この組織はフセイン政権の弾圧を受けたシーア派の一部が隣国イランで組織したもので、イランから物心両面の支援を受けてきました。

 同軍団の司令官バヤン・ジャベル前内相は、イラク治安部隊のなかにバドル軍団のメンバーを多数引き込み、「死の部隊」を結成。この部隊がスンニ派に対する殺りく、拷問に手を染めているとみられています。

 もう一つは、イラク南部と首都バグダッドのサドルシティーに影響力を持つサドル師派の民兵組織マハディ軍団です。同派は米軍による占領当初から、集会を開くなどして抗議、米軍による〇四年四月の第一次ファルージャ攻撃の際にはスンニ派住民と連帯しました。

 サドル師派は現在国民議会に三十議席を有しています。マハディ軍団はサドル師の統率から離れてスンニ派やバドル軍団と武力対立する傾向もみせています。

アルカイダ系組織

 アルカイダ系のテロ組織はスンニ派に属し、イラクを世界的な反米闘争の主戦場と位置づけ、イラクの内戦を引き起こすことを狙っています。

 スンニ派武装組織とアルカイダメンバーの合計は、米軍の推定で八千人から二万人。イラク情報当局者によると、四万人に達し、ほかに十六万人の支持者がいるとみられています(英BBC放送による)。

 「イラクの聖戦アルカイダ組織」の指導者ザルカウィ容疑者が今年六月、米軍の空爆で死亡したあとも、次の「指導者」が名乗り出ています。〇四年八月に起きたバグダッドの国連現地本部爆破は彼らの犯行とみられています。自爆テロや外国人の誘拐・殺害にも手を染めています。

 メンバーはシリア、サウジアラビア、イエメン、スーダンなどの外国人だけでなく、かなりのイラク人もいるといわれます。

 今年初めには他の五つのテロ組織がイラクのアルカイダ組織とムジャヒディン・スーラ評議会という連合組織を結成したとネットで発表。アルカイダ組織の広がりをみせています。

クルド系の組織

 クルド北部を根拠地にするアンサール・アル・スンナもアルカイダ系組織との連携を強めているといわれます。この組織はイラク戦争中、米軍の爆撃で自派の根拠地を破壊されました。親米でクルド地域を支配するクルド愛国同盟やクルド民主党に敵対するクルド人などからメンバーを募っているといわれます。〇四年二月に起きたクルド自治区アルビル中心部のクルド愛国同盟などを狙った自爆テロの犯行を認めています。(伴安弘)


イラクで発生した主なテロ(現地時間)

 【2003年】

 8月19日 首都バグダッドの国連現地本部で自動車爆弾テロ。デメロ国連事務総長特別代表ら死者24人

 【2004年】

 2月1日 北部アルビルのクルド政党事務所2カ所で同時自爆テロ、約100人死亡

 3月2日 首都バグダッドとカルバラで同時テロ、約270人死亡

 【2005年】

 2月28日 ヒッラで自動車爆弾テロ、少なくとも125人死亡

 7月16日 首都南方の町ムサイブにあるモスク付近で自爆テロ、98人死亡

 9月14日 首都の数カ所で自爆テロ、少なくとも130人以上死亡

 【2006年】

 2月22日 中部サマラのシーア派聖廟で爆弾テロ。死者140人以上

 7月1日 首都のサドルシティーで自動車爆弾テロ、少なくとも66人が死亡

 11月23日 サドルシティーで車爆弾テロなどが相次ぎ、ロイター通信によると160人が死亡


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp