2006年11月28日(火)「しんぶん赤旗」
大企業に減税 庶民には“税 税 税”
政府と自民が本格的検討
企業献金テコに財界要求
自民党税調が二十七日、二〇〇七年度税制「改正」大綱に向けた本格的な議論を開始しました。安倍首相の肝いりでスタートした政府税制調査会(首相の諮問機関)とともに、大企業減税を最優先しようとしています。(山田英明)
「(税制改革の中で)我が国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資する」。安倍首相は七日の政府税調総会で、いっそうの企業減税を検討するように求めました。
政府税調の本間正明会長はこれをうけ、政府税調の課題として「法人税の課税ベースや税率の問題が浮かびあがる」と明言。テレビ番組や週刊誌で、法人税の実効税率を現行の40%から30%台にまで引き下げる必要があると語っています。10%引き下げると四兆円超の減税となります。
さらに、政府税調は〇七年度税制「改正」で、企業の減価償却制度を見直す構えです。
経済産業省の試算によれば、同制度拡充による減税規模は、新規設備のみを対象とした場合、国と地方をあわせて七千億円以上となり、全設備を対象とした場合、最大二兆三千億円に達する見込みです。
トヨタ自動車が営業利益で二兆円を突破(〇七年三月期)しようとしているのをはじめ、大企業はバブル期を超える空前の利益を更新し続けています。もともと法人税の実効税率のいっそうの引き下げは、財界が企業献金をテコに政府に求めてきたものです。
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企業減税促進の語録
「こうした税制改革の中では、喫緊の課題として、わが国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資するとともに、歳出削減を徹底して実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対する安定的な財源を確保」(安倍首相による政府税調への諮問、11月7日)
「現在の40%から30%台にどうもっていくか、来年以降の課題」(本間正明政府税調会長、「毎日」11月7日付)
「(法人税の実効税率引き下げについて)中長期の方向性を議論して(2007年度税制『改正』答申に)書きたい」(同、22日の政府税調総会後の記者会見)
「(法人税の実効税率について)30%をめどに考えるべきだ」「来年秋以降(消費税など)税制全体の抜本的見直しをするタイミングになろう」(御手洗冨士夫日本経団連会長、11月13日の記者会見)
来年1月に所得税 6月に住民税
定率減税廃止でズシリ
小泉内閣が、五年半に実行・計画した増税や社会保障改悪による庶民の負担増は約十三兆円に達します。
今年六月には、住民税の定率減税半減とともに、公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止、低所得高齢者の非課税限度額の廃止が庶民を襲いました。これによって五百万人以上に及ぶ高齢者が増税になりました。その影響は、国民健康保険料や介護保険料の引き上げに及んでいます。
自民・公明内閣はすでに、〇七年には所得税・住民税の定率減税の廃止(所得税は一月、住民税は六月)を国民に押し付けることを決めています。定率減税全廃による増税は三・三兆円です。〇七年度予算に向けた議論では、子育て中の単身世帯を考慮した生活保護の母子加算全廃ももくろまれています。
さらに安倍首相は、来年秋以降に消費税増税に向けた議論を本格化させる構えです。
マスコミも批判
庶民に増税を押し付ける一方で、いっそうの大企業減税をすすめようとする安倍自民・公明政権に、マスコミも批判の声を上げています。
「安倍政権の『血税大ペテン』」。『週刊ポスト』十一月二十四日号はこう見出しを掲げ、安倍政権の経済政策を「庶民には大増税、大企業にはバラマキを」という“正体”がはっきり見えてきたと断じました。
また、『週刊ダイヤモンド』は「法人税減税というエゴ」と題したコラムを掲載。この中で「消費税増税は目前で、個人の負担増が明白な今、論理怪しげな法人税減税は企業エゴにしか映らぬ」とのべています。
さらに、週刊誌の『アエラ』(十一月二十七日号)は、「経済界べったりの横暴 企業減税は消費税にツケ」との見出しで、「企業減税はいずれブーメランのように消費税増税に跳ね返る」と報じました。
定率減税廃止をはじめとした庶民大増税はやめ、空前の利益をあげる大企業に応分の負担を求めることこそ必要です。