2006年12月1日(金)「しんぶん赤旗」
「防衛省」法案
赤嶺議員の反対討論(大要)
三十日の衆院本会議で可決された「防衛省」法案(防衛庁設置法・自衛隊法改悪案)について、日本共産党の赤嶺政賢議員が行った反対討論(大要)は次の通りです。
戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を規定した憲法九条の下で、歴代政府は「専守防衛」を建前とし、自衛隊の任務を「日本防衛」に限定してきました。これを根底から覆し、海外での活動を自衛隊の任務に位置づけるのが、本法案の核心です。日本の安全保障政策を大転換するものにほかなりません。にもかかわらず、そのことを正面から説明せず、国民的な議論を回避し、わずか十七時間の審議で採決を強行しようとしている政府・与党に対し断固抗議するものです。
「自衛のための必要最小限度の実力だから憲法に違反しない」というのが、歴代政府の憲法見解です。だからこそ自衛隊法三条は自衛隊の任務を「日本防衛」に限定してきたのです。憲法見解と不離一体のものとしてつくられた任務規定を変更し、海外での活動を自衛隊の任務に位置づけることは、憲法に反する行為といわなければなりません。歴代政府の憲法見解を根底から覆し、憲法九条を真っ向からふみにじる明白な違憲立法であり、断じて許されません。
新たに任務とされた海外活動なるものは、周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法など、米軍に対する後方支援活動そのものです。こうした海外での「米軍戦争支援」を自衛隊の存立目的である任務に位置づけ、「それにふさわしい体制づくりをすすめる」というのです。自衛隊の編成、装備、作戦、訓練のあらゆる面で日米の軍事一体化をおしすすめ、まさに自衛隊を「海外派兵隊」「米軍戦争支援隊」にするものです。
9・11テロ以降、アメリカが公然と打ち出したブッシュ・ドクトリン、すなわち先制攻撃戦略は、イラク・アフガニスタンの危機的な情勢悪化と泥沼化、テロと戦争の連鎖の前に、その破綻は明白です。にもかかわらず、いまだにブッシュ戦略につき従い、海外での「米軍戦争支援」を自衛隊の任務として本格化させるなど、世界の平和秩序への逆行以外の何物でもありません。
防衛省問題では、政府があげてきたあれこれの理由がまったく成り立たないことが短い審議の中でも明らかになりました。防衛庁長官自身が「これまでの防衛庁でも何ら支障はなかった」と言い、「憲法九条からあえて省にしていないと説明すれば、外国の理解は得られる」と答弁しました。根拠は総崩れです。
度重なる談合・水増し事件で問われてきた防衛庁・防衛施設庁の腐敗・隠ぺい体質には、何らメスは入っていません。防衛施設庁談合事件を逆手にとって、「省」昇格をすすめ、「米軍再編」をはじめとする住民無視の軍事行政を迅速かつ強力におしすすめる体制をつくろうとしているのです。断じて容認できません。
最後に、安倍内閣が憲法「改正」を公然と掲げる下で、核武装発言、非核三原則の見直し、集団的自衛権行使の解釈変更を次々と打ち出しています。こうした憲法蹂躙(じゅうりん)の動きと一体のものとしてすすめられている本法案の廃案を断固として要求し、討論を終わります。