2006年12月2日(土)「しんぶん赤旗」
大企業減税の大合唱
応援先 あべこべだ
安倍政権と財界は“もっと企業減税をやれ”の大合唱です。史上空前の大もうけをする大企業をさらに応援する一方で、財源がないからと庶民増税をたくらんでいます。これでは低迷する家計は大打撃。話があべこべです。安倍政権は「国際競争力強化」のためだといいます。そんな言い分はどこからみても通用しません。(山田俊英、山田英明)
「国際競争力」強いのに
安倍首相は「わが国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資する」ための税制「改革」を唱えています。「わが国経済」といっても、国内総生産(GDP)の55%を占める個人消費のことは眼中にありません。それどころか、庶民大増税で個人消費を冷やすことばかり考えています。安倍政権が熱中しているのは「わが国企業」の国際競争力を強化するという口実による大企業減税です。
しかし、日本の大企業の国際競争力は驚くほど高いのが現状です。トヨタ自動車は純利益一兆円を突破し、営業利益でも二兆円を超えようとしています。
売上高でみると、日本の大企業の多くが上位に入ります。少し前の数字ですが、経済産業省、厚生労働省、文部科学省が共同で編集している「ものづくり白書」(二〇〇五年度)が業種ごとに売上高の順位を明らかにしています。
上位十社に入った日本企業は製造業十七業種で六十九社(複数業種であがった社を含む)。実に四割を占めました。ロボットでは八社、電線・ケーブル、アルミニウム圧延、工作機器、情報通信機器では六社と圧倒的です。業種全体の売上高が大きい自動車でもトヨタ(四位)、ホンダ(六位)、日産(七位)が入り、十二位がマツダです。
低い賃金
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異常なのは、大企業は国際競争力が強く、国内総生産はアメリカに次いで世界第二位なのに、庶民にその実感がないことです。
それは、大企業のもうけ方ともうけの還元のし方に問題があるからです。
日本の大企業のもうけは「リストラ効果」と「輸出頼み」といわれます。人件費を削減・抑制し、部品の単価切り下げで輸出競争力をつけるというやり方です。「ワーキングプア」(働く貧困層)が社会問題化し、サービス残業や「偽装請負」という無法が職場でまかり通っているのも、コスト削減競争の結果です。
米国労働省は独自に三十カ国あまりの時間あたり人件費を比較していますが、〇四年時点で日本は十五位。米国や大半の欧州諸国を下回っています。
全日本金属産業労働組合協議会(IMF―JC)が試算した実労働時間あたり人件費でも、日本を一〇〇とすると、ドイツ一三八、米国一〇五です(〇五年十二月「日本経団連『経営労働政策委員会報告』に対する見解」)。
役員報酬
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「リストラ効果」で大企業が大もうけをしても、労働者にはそれにみあった還元はされていません。
財務省の法人企業統計によると、資本金十億円以上の大企業の経常利益は二〇〇〇年から〇五年にかけて一・五倍に増えました。役員報酬は総額一・七倍、一人当たり一・八倍、株式配当は二・五倍になりました。ところが、従業員給与は同期間、総額で〇・九五倍、一人当たり〇・九七倍と逆に減りました。
〇五年時点で大企業の役員報酬は一人当たり二千八百十万円。これに対し従業員年収は五百八十八万円。格差はますます開きました。
もっと大企業向け減税をすれば、国際競争力が強まり、家計にも波及するという安倍政権の宣伝は通用しません。
もうけは家計に還元を
政府税制調査会の本間正明会長は「(税収の)自然増収の一部を財源に、法人課税を手当て(減税)していく」(「毎日」十一月七日付)と語っています。企業の業績があがり、納める税収が増えれば企業に還元するという考え方です。大企業の景気が悪くても良くても“大企業減税先にありき”です。
大企業の業績があがったのは、労働者や下請け業者らの努力があってのこと。もうけに応じた税金を負担し、国民に還元すべきです。
企業のもうけはバブル期を超えたのに、法人税の相次ぐ減税で、法人税収は急減しています。日本の大企業が負担する税と社会保険料の負担(GDP比)は、ヨーロッパ諸国と比べてもまだ低い水準です。
かつて谷垣禎一財務相(当時)は記者会見で、「(法人基本税率が)30%で(同税収が)十三・三兆円ですから、これを40%にしますと、(同税収は)十八兆円を多分超える」と語りました。
大企業に応分の負担を求めれば、庶民増税をすることなく、大幅な財源を確保することができます。こうした財源を充てれば、社会保障を切り詰める必要もありません。
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