2006年12月2日(土)「しんぶん赤旗」
イラク駐留長期化狙う
米秘密メモで浮き彫り
地位協定交渉を要求
米紙ニューヨーク・タイムズ十一月二十九日付が報じたマリキ・イラク首相の評価に関するハドリー米大統領補佐官(国家安全保障担当)の同月八日付秘密メモは、ヨルダンでのブッシュ大統領との会談をマリキ氏が一部とりやめた原因とされるなど、現実政治に影響を及ぼしています。このメモは同時に、ブッシュ政権がイラク政策の根本的立て直しを迫られるなか、同政権が当面イラクで何を目指しているかをうかがわせる資料ともなっています。
このメモで注目されるのは、マリキ首相の能力を高めるために「マリキがとることのできる措置」の一つとして、米軍地位協定の交渉にふれている点です。メモでは「(マリキ首相が)地位協定を来年交渉することによって、米国との二国間の諸問題に対処するよう求めると宣言する」としています。
今、米国では、米軍のイラク撤退を求める声が、ますます強まっています。これは、イラク戦争の破たんに対して米国民が十月七日の中間選挙で示した与党・共和党への厳しい審判を受けたものです。議会が任命した超党派委員会「イラク研究グループ」が六日に提出する報告も、米軍部隊の何らかの「段階的撤退」を勧告すると報じられています。
基地建設次つぎ
これに対してブッシュ政権がねらっているのは、イラク政権側にイラク駐留米軍の地位協定締結を「求め」させることによって、米軍駐留の長期化をはかるということ。秘密メモが示唆するのはこの点です。
現にブッシュ大統領は、三十日のマリキ首相との会談後の共同記者会見で、「イラクでの米国のプレゼンス(米軍駐留)は、イラクの政府が要請する限り続く」「われわれは仕事が終わるまで、(イラク)政府がわれわれに駐留を望む限りイラクにとどまる」と繰り返しました。これは、「駐留の必要がなくなれば帰国する」「現地司令官が判断すれば撤退する」といった従来の説明とは調子の違うものです。
またイラクでは、世界最大級のバグダッドの米国大使館をはじめ、一連の恒久的な米軍事基地・施設の建設が続いています。
サウジ関与図る
秘密メモでもう一つ注目されるのは、「イラクに関して指導的役割を果たすようサウジアラビアに強い圧力をかける」よう米政権に勧告していることです。
これに関連して、ブッシュ氏の今回のヨルダン訪問の直前に、めったに外国訪問しないチェイニー副大統領がサウジアラビアを訪問し、十一月二十五日にアブドラ国王と会談するという動きがありました。
この会談で何が話し合われたかは不明ですが、「内戦瀬戸際」と言われるイラクの泥沼状態の打開のため、イラクに大きな影響力をもつイランやシリアと交渉せよとの声が強まるなか、秘密メモの勧告やチェイニー氏の外交は、それへの対案としてサウジアラビアの役割強化を目指す動きと見ることもできます。
この点で注視されるのは、サウジ政府の安全保障問題顧問のナワフ・オバイド氏のワシントン・ポスト十一月二十九日付への寄稿です。同氏は、米軍のイラクからの段階的撤退もありうる情勢になってきたので「サウジ指導部はイラク政策の大幅修正の準備をしている」と指摘。サウジはこれまでイラクへ不干渉の立場をとってきたが、米軍が撤退すれば、イラクのイスラム教スンニ派の擁護のため、同派の「指導」国として軍事的に介入することもありうるとの見方を示しました。
同氏は、「サウジが関与すれば地域戦争を引き起こす危険があるが、何もしないことの結果の方がはるかに悪い」と述べています。(坂口明)