2006年12月9日(土)「しんぶん赤旗」
主張
米イラク政策見直し
誤り認め全面撤退に踏み出せ
米議会が発議した超党派の独立委員会「イラク研究グループ」が大統領と議会に報告書を提出し、イラク政策見直しが本格化しています。
米政府のイラク政策が「機能していない」(ハミルトン同グループ共同委員長)なか、与党の共和党はさきの中間選挙で敗北しました。報告書は、情勢が「深刻で悪化」しているイラクで「成功する保障」はないと認めています。ブッシュ政権のイラク政策が完全にゆきづまったことは明らかです。
主権回復が不可欠
報告書の「もっとも重要な勧告」は、「軍事だけでなく」(ベーカー同共同委員長)「新たな外交的、政治的な努力」と「イラク駐留米軍の主要任務の変換」です。「イラク軍への支援が進展すれば」「米軍は撤退を開始でき」「戦闘旅団が二〇〇八年第一・四半期までに撤退することは可能だ」というのが中心部分です。
そうすれば「見通しを改善」できるというのが報告書の立場です。ブッシュ大統領は報告書の「すべてをうけいれることはない」といいつつ、クリスマスまでには態度を表明するとしています。
報告書はイラク政策のゆきづまりは認めながら、今日の情勢悪化をもたらしたイラク戦争の誤りそのものには言及していません。
イラクに大量破壊兵器が存在するという証拠も、イラクの前政権が国際テロ組織アルカイダと結びついていたという証拠もなく、一方的に攻撃を開始し、侵略と占領を続けてきたブッシュ政権の口実はことごとく崩壊しています。うそではじめた米英軍のイラク先制攻撃戦争は、国連憲章を踏みにじってイラクの主権を侵犯した侵略戦争であり、だからこそ国際社会のきびしい批判をうけ、米国内でも批判の世論が多数になってきました。
イラクの領土を侵略しただけでなく、残虐な掃討作戦をくりかえし、とりわけスンニ派を標的にしたシーア派勢力の軍事行動をあおり、テロ活動の土壌を広げてきた米軍占領の責任は重大です。米国のイラク政策を見直すというなら、基本に据えるべきはこの誤りをただすことです。
米国はイラク侵略と占領の誤りを認め、全面撤退の道に踏み出すべきです。国連はじめ国際社会に対して責任をはっきりさせ、イラク国民と国際社会の協力をえる必要があります。
イラク政府のなかには、当面の米軍駐留を望む声もありますが、イラク国民の圧倒的多数(九月の世論調査で71%)は速やかな米軍撤退を求めています。
前線の部隊は撤退させても米兵駐留、米軍基地保持を続けるというのではなく、全面撤退へと踏み切るべきです。イラクにとって主権回復の見通しが生まれてこそ、困難な民族、宗派間和解も可能になります。
航空自衛隊引き揚げよ
イラクに派兵した国も相次いで撤退に動き、残るのは十七カ国にすぎません。英軍に次ぐ規模のイタリア軍は「間違った戦争」(首相)だったとして完全撤退しました。韓国軍も撤退に動き始めています。
安倍首相はイラク戦争「支持」を言い続け、日本政府はイラク情勢悪化の根本原因になっている米軍兵士、軍事関連物資を輸送し、不当な占領に手を貸している航空自衛隊の派遣延長を決めました。
日本政府は、世界の大義に反するこの誤りを大もとからただし、空自を引き揚げるべきです。