2006年12月9日(土)「しんぶん赤旗」
道路特定財源の見直し
首相のもくろみ崩れ
政府が八日、閣議決定した道路特定財源の見直し、「一般財源化」では、不要な道路のムダづかいがなくなる保証はまったくありません。その中身は、「真に必要な道路整備は計画的に進める」としたうえで、来年中に具体的な道路整備の中期計画をつくること、一般財源化する範囲を、税収全体ではなく道路歳出を上回るものに限定するなど、道路建設推進の方針に変更はありません。
結果的には、最大の焦点だった揮発油税の一般財源化も明記されず、各紙もいっせいに「玉虫色決着」「腰砕け」とするなど、安倍首相の当初のもくろみが骨抜きにされたものになっています。
一般財源化をめぐっては、小泉純一郎前首相が就任早々に掲げましたが、自民党内の道路族や、自動車業界などの反発により先送りしてきた経緯があります。
小泉「改革」の継承・推進を掲げる安倍首相は、内閣発足の所信表明で「道路特定財源については、現行の税率を維持しつつ、一般財源化を前提に見直しを行い、納税者の理解を得ながら、年内に具体案をまとめる」と一般的に表明していました。それが、郵政「造反」議員十一人の復党を認め、世論の反発があらわになった十一月二十八日になり、にわかに塩崎恭久官房長官に「一般財源化」の具体策とりまとめを指示しました。
首相は二日後の経済財政諮問会議で「道路特定財源を決して聖域にしない」とし、自動車重量税だけでなく、特定財源の約八割を占める揮発油(ガソリン)税部分も一般財源化する決意を示しました。塩崎官房長官は「道路特定財源の見直しは改革の試金石」とのべて主導しました。
ところが、“道路族”を中心に自民党側がこれに猛反発。片山虎之助参院幹事長は「首相の原則もあるが、道路整備もしないといけない」「一般財源にするのが改革ではない」とまで主張し、一日の自民党道路調査会では、賛成は二十七人中一人だけという状況となりました。
党側の反発には、少なくない地方自治体首長らも一般財源化に反対しているなか、来年の参院選対策という党利党略も見え隠れします。
さらに、道路行政を管轄し一般財源化に消極的な国土交通省の大臣を連続して担当する公明党の存在も影響しました。合意では、新たな道路関連施設にも財源を振り向けることを盛り込みましたが、これは特定財源の道路関連への使途拡大にとどめようとする公明党への配慮とされます。
「改革の試金石」だった一般財源化が骨抜きになったことで、安倍首相の政治姿勢が根本から問われることになります。首相は、道路特定財源の見直しで、郵政「造反」議員の復党決定による支持率大幅低下の挽回(ばんかい)をめざしました。しかし、今回も党の圧力を前に、ムダをなくすためのごく当たり前の政策遂行でさえ指導力を発揮できなかったことで、国民のさらなる批判を浴びることは必至といえます。(小泉大介)