2006年12月9日(土)「しんぶん赤旗」

消費税アップすれば富裕層から多くの税が入る?


 〈問い〉 「日本の租税負担率は先進諸国の中で最低である。消費税には逆進性があるが、所得の捕捉が困難であることを考えれば消費税を上げたほうが富裕層から多くの税を取れる可能性が高い」という説がありますが、どう考えますか?(東京・一読者)

 〈答え〉 まず、なぜ日本の租税負担率が低いかです。その主な要因は1989年に消費税を導入した後、その前と比べて大企業などの法人税率を42%から30%に引き下げ、「富裕層」の税率を60%から37%に引き下げたからです。消費税収は、90年と比べ2005年には4・5兆円から10・5兆円に増えましたが、法人税は18・4兆円から12・5兆円、所得税は26兆円から14・7兆円に減少しました。その結果、国の税収は60・1兆円から47・0兆円に落ち込みました。

 したがって、国の税収を増やすためには、法人税率、高額所得者の最高税率を消費税導入前にもどすことです。これが、国民的な立場から租税負担率をあげる道です。

 次に、消費税率を上げた場合ですが、税率を上げても、富裕層から多くの消費税は取れません。富裕層は、収入の大半を消費税がかからない貯蓄や株・土地の購入などに使い、消費支出の割合が低いためです。事実、年間収入約300万円の世帯では86%を消費に使いますが、1400万円を超える世帯では半分以下の42・7%にすぎません。

 1億円の年収の方を例にあげます。この方は、所得税・住民税、社会保険料などを納め、残りは貯蓄や株・土地の代金にし、一定額―2000万円を消費すると仮定します。そのすべてを国内で使ったとしても、消費税額は5%の100万円です。消費税率を10%に引き上げた場合、増税額は2000万円の5%で100万円となります。

 一方、仮に、富裕層の所得税率を5%上げれば、500万円の増収になり、消費税を5%あげた場合の5倍の税収になります。

 しかも、「消費税には逆進性がある」ため、税率引き上げは、庶民に重くのしかかります。政府の調査でも、年収に占める消費税の割合は、年収300万円の世帯で4・2%、一方、1500万円以上の世帯では1・4%にすぎないことが示されています。

 なお、一部の富裕層は、所得税だけでは「捕捉が困難」という面はあります。しかし、これは相続税やぜいたく品に適正に課税することで補うことができます。逆進性のある消費税を引き上げることでは、「捕捉」できなく、貧富の格差を広げるだけです。(木)

 〔2006・12・9(土)〕


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