2006年12月13日(水)「しんぶん赤旗」
主張
道路特定財源
「改革の試金石」で出た地金
安倍内閣は道路特定財源の一般財源化を「改革の試金石」と位置づけてきました。安倍首相は今国会の所信表明演説で、「一般財源化を前提に見直す」と明言しています。
ところが、政府・与党が合意し閣議で決定した「具体策」は、来年中に新たな道路整備の計画を作り、道路予算を上回る税収に限って一般財源に回すとしています。
無駄な道路建設の財源保障制度となってきた道路特定財源は、道路建設を最優先する仕組みを固定化する「見直し」で決着しました。
無駄遣いの温床
国の道路特定財源は、ガソリンにかかる揮発油税(約三兆円)、自動車重量税の三分の二、LPガスにかかる石油ガス税の半分を合わせて三・五兆円に上ります。地方分は、ガソリンにかかる地方道路税、石油ガス税と、自動車重量税の残り、軽油引取税、自動車取得税の合計二・二兆円が道路特定財源となっています。
安倍内閣と与党の「具体策」は、焦点となっていた揮発油税の一般財源化にまったく触れませんでした。第一に掲げたのは新たな道路整備計画で、基幹道路や高速道路の建設を明記しています。
全国総合開発計画や公共投資基本計画、高速道路整備計画、五カ年計画など「初めに建設ありき」のやり方は、特定財源とともに無駄遣いの温床となってきました。自民党は、建前では「真に必要な道路を整備する」(自民党の中川昭一政調会長)と言っています。しかし、これまでの“実績”が「決して無駄はなくならない」ことを証明しています。
小泉前内閣は道路整備について、二〇〇七年度までの五年間の事業量目標を三十八兆円と閣議で決めました。従来の五カ年計画への国民の批判を受けて衣替えした「社会資本整備重点計画」にもとづく決定です。公明党の冬柴国土交通相は一日の会見で、この三十八兆円を「国家意思だ」と盾にとって、特定財源の「根本的な仕組みは崩れない」ことをはっきりさせるよう主張しています。こうした「縛り」を予算にかけることが道路族の狙いです。
しかも新整備計画に従って道路に使うだけ使い、余りが出たら一般財源にというのですから開いた口がふさがりません。「党内の99%は抜本改革に反対」(中川政調会長)という自民党の思惑通りの結末です。
道路特定財源は国道・県道の舗装率が5%以下しかなかった半世紀前に始まった制度です。今では舗装率は97%に達しており、この制度を続ける理由はありません。特定財源として道路に使い道を限定しているため、税収が増えれば道路を余分に造るという無駄遣いの温床になってきました。
政府は公共事業の「重点化・効率化」の名目で生活道路の予算を削る一方、大都市圏の自動車専用道など財界奉仕の大規模事業に配分を集中しています。これが、いっそうの無駄遣いと環境破壊を進めています。
切実な一般財源化
石弘光・前政府税調会長さえ「他の先進国も全部一般財源化している」とのべています。税金を道路に流し込む制度をやめて一般財源にすることは時代の要請です。本当に必要な道路は一般財源でも造れます。
政府は難病医療の補助や生活保護を削減し、リハビリを制限するなど、社会保障の冷酷な切り捨てを続けています。揮発油税などの税収を不要不急の道路につぎ込むのではなく、急を要する国民生活のための財源として活用することが切実な課題となっています。