2006年12月15日(金)「しんぶん赤旗」
逆立ち税制 過去 現在 未来
大企業には大減税 穴埋めは庶民増税
減価償却制度の拡充など大企業減税を最優先した自民、公明両党の二〇〇七年度税制「改正」大綱。所得税・住民税の定率減税全廃(所得税は〇七年一月、住民税は同六月)はすでに決めています。安倍自・公政権は庶民にいっそうの増税をして財源を生みだし、大企業減税に回そうとしています。大企業減税の穴埋めは庶民増税で―。政府・与党の一貫するたくらみをみました。(山田英明)
消費税導入でも
導入後十八年目を迎えた消費税。この間、国民が支払った消費税額は、累計で約百七十四兆八千億円(〇六年度)に達する見込みです。
一方、同期間の法人三税(法人税、法人事業税、法人住民税)の減収額累計は約百五十九兆七千億円。不況による影響とともに、相次いで実施されてきた法人税減税によって、法人税収は減少を続けてきました。
法人三税の減収分を消費税収が穴埋めしてきた計算になります。
「(法人税減税の)財源として必要なら課税ベースの広い間接税を導入すべきだ」。八六年八月の政府税制調査会の公聴会に出席した鈴木永二経団連税制委員長(当時)がこう求めていました。大企業減税の財源として「大型間接税」を導入しろというのが財界の要求でした。消費税は大型間接税の一種です。消費税は、財界が求めたように大企業減税などによる法人税収の減収分の穴埋めの役割を果たされてきました。
07年度も
「財政健全化」をスローガンにかかげながら、大企業にはいっそうのバラマキ減税を行おうとする安倍政権。〇七年度税制「改正」では、企業の減価償却制度の拡充をたくらんでいます。その穴埋めも庶民増税です。
〇七年には、所得税と住民税の定率減税がそれぞれ全廃されます。
「経済が順調に回復」(尾身幸次財務相)していることを口実にした定率減税の全廃。しかし、定率減税とともに九九年に導入された大企業減税(法人税率引き下げ)、大金持ち減税(所得税の最高税率引き下げ)は温存したままです。
〇六年にすでに半減されている定率減税全廃による新たな国民負担増は総額約一兆七千億円(〇七年)に達します。
減価償却制度拡充による減税規模は国と地方をあわせて六千億―七千億円規模。巨額の設備投資をする大企業ほど大幅な減税になります。経営難にあえぐ赤字企業が約七割を占める中小零細企業は、減税の恩恵をうけることができません。
「抜本改革」でも
安倍政権が、来年の参院選挙後に議論を本格化させようとしている「税制の抜本的・一体的改革」(安倍首相)。ここで決められようとしているのは、所得税や消費税などの庶民増税とともに、大企業減税です。
「(現行約40%の法人税の実効税率について)30%をめどに考えるべきだ」。日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)はこう主張しています。「国際競争力」を口実に、政府にいっそうの大企業減税を求めています。
日本経団連は来年一月に公表する「御手洗ビジョン」で、現行5%の消費税率の段階的引き上げを求め、第一段階で7―8%への引き上げを明記すると報じられています。
法人実効税率の10%引き下げによる減税規模は約五兆円です。これは消費税率の約2%分。法人実効税率の10%引き下げと消費税率の2―3%引き上げが見事に符合します。
史上空前の大もうけをする大企業にいっそうの減税をするために、低迷する家計にまたまた負担を強いる―この逆立ちを改めさせ、大企業に応分の負担を求め、家計の応援に回すことこそ求められています。
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