2006年12月16日(土)「しんぶん赤旗」
改悪教育基本法から子どもを守る新たなたたかいを
抗議集会への 志位委員長の報告
(大要)
日本共産党の志位和夫委員長が十五日、教育基本法改悪法案の採決に抗議する国会要請行動でおこなった国会報告(大要)は次の通りです。
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みなさんごくろうさまです。日本共産党の志位和夫です(拍手)。連日のみなさんのご奮闘に心からの敬意と感謝をのべるとともに、国会報告をかねて熱い連帯のあいさつをおくります。(拍手)
悪法強行には、ひとかけらの大義も道理もない
本日、与党――自民、公明は、参議院本会議で、教育基本法改悪法案の採決を強行しました。この悪法の強行には、ひとかけらの大義もなければ、道理もない。このことをまず言いたいと思います。(拍手)
議会制民主主義を壊す無法なやり方
第一に、この法案が、どういうやり方で強行されたでしょうか。衆参とも、乱暴きわまる国会のルール破りのやり方で強行されました。衆議院では、与党単独の採決強行という異常事態となりました。参議院では、与党による一方的な審議打ちきりによる強行採決という暴挙となりました。
教育の根本法である教育基本法を、議会制民主主義のイロハもわきまえない無法なやり方で強行する。こんな勢力が子どもたちに民主主義を教える資格があるでしょうか(「ない」の声)。断じてないと言いたいと思います。(拍手)
「慎重な徹底審議」を求める国民の声を無視
第二に、国民から「法案を早く通してほしい」などという声があがっていたでしょうか(「ない」の声)。正反対であります。どんな世論調査でも、国民の多数は「慎重で徹底的な審議」をもとめていました。
十二日には、衆議院・参議院で、参考人質疑や公聴会で意見をのべた二十名の方々のアピールが出されました。参考人・公述人の方々は、「私たちは、公述人として政府法案について多くの問題点を指摘する意見をのべてきました。ところが、私たちがのべた意見については、まだほとんど議論されていない状況です」とのべ、法案成立を強行するなら「日本の教育にとって取り返しのつかない事態をまねく」と批判しています。
「慎重で徹底的な審議を」――国民のこの声を無視し、問答無用で審議を打ち切った自民・公明の罪は深いものがあります。(「そうだ」の声、拍手)
国会論戦をつうじて、法案の根拠はことごとく崩れた
第三に、国会論戦で、政府は、この法案の根拠を、少しでもまともに説明できたでしょうか。
「なぜいま基本法の改定が必要か」――多くの国民が抱いた疑問について、政府は最後まで何も説明もできなかったではありませんか。
「憲法の保障する内心の自由、教育の自由に反するのではないか」――法案の根幹にかかわる重大問題で、政府は答弁不能におちいったままだったではありませんか。
「いじめ問題など、国民が切実に解決を願っている教育の問題を解決できるのか、反対にこれをいっそうひどくするのではないか」――政府はいじめ問題についても、それをどう克服していくのか見識のかけらも示せなかったではありませんか。
国会論戦をつうじて、法案の根拠はことごとくくずれさりました(拍手)。彼らがもっていたのは道理ではありません。根拠もありません。数だけであります。この“数の暴力”を、私たちは、断じて認めるわけにはいきません。(「そうだ」の声、拍手)
「やらせ」を恥じない勢力に、無制限の介入の権限
第四に、くわえて政府・文部科学省による「やらせ」と「さくら」は、この政府には教育の根本法を論じる資格がないことを明らかにしたのではないでしょうか。(拍手)
政府は、国会閉会日まぎわになって、「やらせ」問題の「最終報告書」なるものを出してきました。真相も責任の所在も明らかにしていない不十分きわまるものでしたが、ともかくも政府自身が「世論誘導」をやっていたということを認めました。
政府は「やらせ」問題と、教育基本法改定の問題は別問題だと弁明しました。しかし、両者には深いかかわりがあります。今度の改悪基本法というのは、政府・文部科学省に教育内容にたいする無制限の介入の権限をもたせるというものです。ここに法改悪の核心があります。
「やらせ」と「さくら」で「世論誘導」をおこなって恥じない政府・文部科学省の手に、教育内容への好き勝手の介入をさせるというのが今度の法律です。こんな勢力に改悪基本法を与えるならば、子どもたちの大切な心が政府の都合のよい方向にまさに「誘導」されることになるではありませんか。こんな恐ろしいことは、私たちは、絶対に許すわけにいきません。(拍手)
政府、自民・公明による教育基本法改悪――これは国会の歴史、日本の教育の歴史に重大な汚点をきざんだ歴史的な暴挙です。私は、みなさんとともに心からの怒りと憤りをこめて、糾弾の声をあげるものであります。(大きな拍手)
改悪法の具体化に反対し、教育現場へのおしつけ許さぬたたかいを
みなさん、たたかいは、これからが大切になってきます。今後、改悪教育基本法の具体化と教育現場へのおしつけが、問題になってきます。伊吹(文明)文部科学大臣は、「(関連の)法律、予算、学習指導要領などをすべて直す」とのべました。
関連法案の改悪、「教育振興基本計画」の策定でねらうもの
学校教育法、地方教育行政法、教員免許法など三十三の関連法規が改定されようとしています。政府が、教育内容を事細かに指図し、介入する「教育振興基本計画」が策定されようとしています。学習指導要領の改定もすすめられようとしています。
教育現場に何がおしつけられようとしているのか。二〇〇三年に中教審が策定した「教育振興基本計画」のひな型では、つぎのようなメニューがずらりとならんでいます。全国一斉学力テストの実施と結果の公表、習熟度別指導のおしつけ、公立での中高一貫校の設置の推進、教員評価システムの導入などであります。
国家権力が描く青写真にしたがって、競争とふるいわけの教育の歯止めない激化がおしつけられ、子どもたちも、先生たちも、競争においたてられ、「勝ち組」「負け組」にふるいわけられる。これらが教育現場の矛盾をいっそう深刻にすることは火を見るより明らかではないでしょうか。(拍手)
国民が切実に解決を求めている問題はどうなるでしょうか。いじめ問題一つとっても、この問題が解決されない原因の一つに、「五年間でいじめ半減」など数値目標を決めて評価するというシステムがあります。さらにいじめの温床には、子どもたちが競争においたてられ、序列づけられ、ひどいストレスで心が傷つけられているという大問題があります。国民が心を痛めている教育のどんな問題をとっても、改悪基本法が、事態をいっそう深刻にすることは必至であります。
どんな悪法も、教師の心を縛り、父母との共同を断ち切ることはできない
私は、改悪基本法のおしつけは、かならず教育現場での矛盾を深め、破綻(はたん)せざるをえないと思います(拍手)。国がどんな悪法をつくり、教育の現場を統制・支配しようとしても、教師の心――良心と信念まで縛りつけることはできません(「そうだ」の声、拍手)。よりよい教育と子どもたちの健やかな成長を願う父母と教職員の共同を断ち切ることもできないのではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
改悪基本法の具体化に反対し、教育現場へのおしつけを許さないたたかいに、新たな決意をもってのぞもうではありませんか。(大きな拍手)
日本共産党は、一人ひとりの子どもたちの成長を切実に願う国民とともに、改悪基本法から子どもたちの未来をまもり、教育の矛盾を一つひとつ解決していくたたかいに、今後も知恵と力をつくしてとりくむことをお約束するものです。(拍手)
たたかいの立脚点は、日本国憲法そのものにある
今後の私たちのたたかいの立脚点は、どこにあるでしょうか。教育基本法が改悪されたいま、私たちの立脚点はどこにあるのか。私たちのたたかいの立脚点は、日本国憲法そのものにある。このことを私は訴えたいのであります(拍手)。日本国憲法そのものに立脚してたたかいの前進をはかろうということを、私は訴えたい。
改悪基本法は、憲法に二重に背反する
私たちは、国会質疑のなかで、改悪基本法は、日本国憲法に二重に背反することを明らかにしてきました。
第一に、国家が子どもたちに「愛国心」を強制することは、思想・良心・内心の自由を保障した憲法一九条に違反するということです。
第二に、教育内容への国家権力の「不当な支配」を排除したこれまでの第一〇条を壊して、国家権力による教育内容への無制限の介入に道を開くことは、憲法一三条の国民の幸福追求権、一九条の思想・良心・内心の自由、二三条の学問の自由、二六条の国民の教育への権利など、憲法の諸条項が保障した教育の自由と自主性をじゅうりんするものであるということです。
みなさん、改悪基本法と日本国憲法とは根本から矛盾しています。矛盾したときに、どちらが優先されるでしょうか。もちろん日本国憲法が優先されることはいうまでもありません。(拍手、「そうだ」の声)
教育基本法を改悪しても、日本国憲法の制約からは逃れられない
私たちが、国会論戦でその矛盾を正面からただすと、政府は答弁のなかで、つぎのことを認めざるをえなかったことを、この場で確認しておきたいと思います。
第一の問題点、内心の自由にかかわっては、政府は、私たちが、「愛国心通知表」をつきつけると、「子どもの愛国心を評価することは適切ではない」と答えざるをえませんでした。さらに私たちが、「日の丸・君が代」強制にかんして、「『日の丸・君が代』を批判する子どもと国民の思想・良心の自由も保障されなければならないはずだ」とただすと、政府はしぶしぶですが、「批判する子どもの思想・良心の自由も保障しなければならない」と答弁しました。
第二の問題点、教育の自由にかかわっては、政府は、一九七六年の最高裁大法廷の判決――「国家権力による教育内容への介入はできるだけ抑制的でなければならない」、この判決の論理を認めざるをえませんでした。
最高裁大法廷の判決は、この論理を、憲法一三条と憲法二六条から直接に導き出しています。ですから、教育基本法が改悪され、これまでの第一〇条が壊されたからといって、「国家権力による教育内容への介入はできるだけ抑制的でなければならない」という大原則は揺るがないし、これからも政府の手を縛りつづける、このことを私ははっきり指摘しておきたいと思います。(拍手)
教育基本法は改悪しても、政府は自由勝手なことはできないのです。日本国憲法の制約は逃れられないのです。だから私たちは、日本国憲法に立脚してたたかいの前進をはかろうではありませんか。(「よし」の声、拍手)
日本国憲法に立脚し、改悪基本法の具体化に反対し、子どもたちへのおしつけを許さないたたかいを、すすめようではありませんか。(拍手)
憲法擁護のたたかいが、ますます重要に
そして、この意味からいっても、憲法擁護のたたかいがますます大切になります。“教育基本法が改悪されてしまったから、今度は憲法も改悪されてしまう”と意気消沈しては、相手の思うつぼです。反対に、教育基本法が改悪されたら、ますます憲法を守るたたかいが大事になってきた。憲法改悪反対で国民多数派をつくる仕事を、おおいに頑張ってやりぬこうじゃありませんか。(大きな拍手)
子どもと教育を守る運動の国民的広がりに確信をもって
最後にみなさん、今後のたたかいを展望したとき、全国津々浦々からこんなにも大きな規模で、子どもの未来と教育を守る運動が広がったことに、私はほんとうに感動をもっています。ここに私たちは大きな確信をもって、つぎのたたかいにのぞもうではないかということを訴えたいのであります。(拍手)
国民が発揮したすばらしいエネルギー
この間、国民が発揮したエネルギーはすばらしいものでした。教育問題というのは、なかなか難しい面もある問題ですが、教育問題でこんなに大きな国民運動が起こったのは、日本の歴史のなかでも久しくないことです。
全教のみなさんをはじめ全労連、新婦人、農民連、全商連、民青同盟など民主運動の奮闘はすばらしいものがありました。そして全教系、日教組系という労働組合の立場の違いをこえた共同が、全国各地で広がりました。大学関係者も、全国大学高専教職員組合(全大教)、私立大学教職員組合連合(私大教連)が、そろって反対のたたかいに合流しました。
教育研究者は、歴代の教育学会の会長よびかけのアピールに千八十五人が賛同するなど、こぞってこの悪法に反対の声をあげました。全国各地で校長、元校長、教育長、PTA会長などが勇気をもって反対のアピールに名をつらねました。日本弁護士連合会が、この改悪は「立憲主義の否定」だという根本的な批判をおこない、会長声明で反対を旗幟(きし)鮮明にしたことも、心強いかぎりでありました。(拍手)
十月十四日の二万七千人の大集会をはじめ、連日のように数千人規模での集会が国会を包みました。東京でも、全国各地でも、これまでになく多くの国民が声をあげ、たちあがりました。十二月十三日に開かれた緊急集会では、昨年から現在までに全国でとりくまれた集会の規模は、数十万人規模になるという報告がされました。
多くの国民が、教育問題を真剣に考え、行動をはじめた
私は、教育基本法改悪の動きにたいして、これまでにない多くの国民のみなさんが、教育をどうしたらいいか、教育とはどうあるべきか、このことについて真剣に考え、討論し、行動をはじめた、これはすばらしいことだと思います。かつてない規模で教育問題についての国民的討論と行動が起きた。これは今後のたたかいに生きる大きな国民的な財産ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
そしてこの力こそ、国会論戦の力とあいまって、政府の改悪法案をぼろぼろにし、改悪法の成立をぎりぎりまで食い止めた力となりました(拍手)。ここに確信をもって、つぎのたたかいにのぞもうではないかということを、私は、心から呼びかけたいと思うのであります。(拍手)
みなさん、私たちのたたかいの大義、論戦と運動の到達点に確信をもち、子どもと教育を改悪基本法から守り、子どもの成長と発達をささえる運動を発展させることを心から訴え、私たち日本共産党もみなさんとスクラムを組んで今後もたたかいぬく決意を申し上げて、私の国会報告をかねたあいさつとします。今後もともにがんばりましょう。(大きな拍手)