2006年12月16日(土)「しんぶん赤旗」

主張

与党税制大綱

歯止めなき財界言いなり


 自民党と公明党が来年度税制の与党大綱をまとめました。

 設備投資費用を利益から差し引く減価償却税制の優遇措置の拡大で大企業を中心に数千億円の減税、来年度に期限が切れる株売買益と配当の軽減税率延長を盛り込んでいます。

 大企業向けの減税は、減価償却税制にとどまりません。政府・与党は今後、法人税の実効税率そのものの引き下げを狙っています。日本経団連が九月に突きつけた税制要求の丸のみです。

世論操作を本格化

 庶民はこれまで、さんざん増税・負担増を押し付けられてきました。来年もサラリーマンを標的にした定率減税全廃で一・七兆円もの増税が決まっています。政府・与党は参院選後に消費税の税率引き上げを検討する構えを明らかにしています。

 所得を減らされ、負担の増大に苦しむ庶民から、乾いたタオルを絞るようにお金を吸い上げて、過去最高益の更新を続ける大企業への大盤振る舞いに回すのは本末転倒です。

 財界や政府・与党が、こんな逆立ちしたやり方の口実にしているのは「国際競争力の維持」「競争条件を外国と同等に」など、日本の大企業の負担は重すぎるという主張です。

 安倍内閣が発足し本間正明阪大教授が政府税調の会長になる「前」と「後」で、財務省が政府税調に提出した法人税の資料の一部が差し替わっています。

 「前」には入っていた、“日本の法人実効税率より6%も高い米・ニューヨーク市”“法人税と社会保険料を合わせた企業負担が日本の一・五倍のイタリア”“企業の民間医療保険の負担を含めれば保険料負担が日本企業の一・四倍になるアメリカ”のデータとグラフがカットされました。「法人税の実効税率はおおむね先進国水準」「ヨーロッパの大陸諸国では社会保険料負担も企業が随分負担している」(主税局)という観点で掲げていたものです。

 政府・与党は、日本の大企業の負担が重すぎるという虚構を浸透させるための「世論操作」を、本格的に始めようとしています。

 OECD(経済協力開発機構)が十月に公表した歳入統計を見ると事実は明白です。欧州大陸諸国の企業の法人税と社会保険料負担は日本の一・九倍のノルウェー、一・七倍のフランス・スウェーデン、一・四倍のスペイン・イタリアなど軒並み日本を上回っているのが実態です。

 減税に執念を燃やす財界はアジア諸国の法人税率を持ち出しています。しかし、国内資本の不足を外国からの投資で補わざるを得ない途上国と比較するのは非常識です。

 税率が高いから競争に負けるというなら、アメリカ企業はどうなるのか。財界の言い分は通用しません。

大企業に応分の負担を

 逆立ちした政府・与党の税制論議に、経済の専門家からも異論が噴き出ています。「法人税を増税し、所得税や消費税を減税する方向の税制改革が必要である。ところが、現実には、これとは逆方向の税制改革が行われようとしている」(野口悠紀雄・早大教授、『週刊エコノミスト』十二月十九日号)。「論理性に乏しい法人税減税は、企業エゴにしか思えない」(辻広雅文・前週刊ダイヤモンド編集長、『週刊ダイヤモンド』十一月十一日号)

 財界言いなりに歯止めを失った政府・与党のやり方には道理のかけらもありません。大企業、大資産家に応分の負担を求める税制の抜本転換こそ、いまやるべき改革です。


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