2006年12月19日(火)「しんぶん赤旗」

1万円賃上げ可能

大企業内部留保の1.8%

社会的責任果たせ

全労連・労働総研国民春闘白書


 空前の利益をあげるトヨタ自動車など大企業百一社の「ためこみ利益」(連結内部留保)のわずか1・8%を使うだけで、従業員一人あたり月額一万円の賃上げができる―。全労連と労働総研(労働運動総合研究所)がまとめた『二〇〇七年国民春闘白書』で、こんな実態が明らかになりました。貧困と格差拡大が社会問題となるなか、同白書は「大企業のボロもうけを社会的に還元し、応分の負担をさせることは07春闘の重要な課題」と指摘しています。


表

 連結内部留保は、親会社と連結子会社の連結剰余金、資本準備金、退職給与引当金などの合計(〇六年三月期)。主要企業百四十三社(銀行業のぞく)について調べました。

 白書によると、連結経常利益が黒字になった企業は百三十八社(97%)で、赤字はわずか五社。連結内部留保を増やした企業は百十三社(79%)にのぼりました。

 連結経常利益の最も多い企業は、トヨタ自動車で二兆八百七十三億円。NTTドコモ九千五百二十三億円、日産自動車八千四百五十八億円と続いています。

 内部留保でも、トヨタ自動車が前年同期比一兆五千七百九十八億円増の十一兆九千四百十一億円でトップ。本田技研、東京電力と続き、一兆円以上の内部留保があるのは三十一社ありました。

 日本経団連の御手洗冨士夫会長を出しているキヤノンは、二兆七千三百五十億円で七位でした。

 一人あたりの連結内部留保は、NTTドコモ一億六千九百七十二万円、武田薬品工業一億四千三百二十四万円、関西電力八千二百五十七万円と続き、トヨタ自動車は四千百七十六万円でした。

 一人あたり一千万円以上の内部留保があるのは百一社。一千万円―二千万円未満が五十社、二千万円―三千万円未満が二十一社、三千万円以上は三十社ありました。

 また、持ち株会社(百十社)の連結内部留保では、日本電信電話が八兆四千百五十五億円で昨年に続いてトップ。三菱UFJ、三井住友、みずほの各ファイナンシャルグループと続き、金融機関が上位を占めました。

グラフ

 白書では、従業員が増加した企業は百三社(72%)にとどまっていることなどをあげて、「経常利益や内部留保が増大しても設備投資や株主配当金などに回され、賃金の増大には結びついていない」と分析しています。

 一人あたり一千万円の内部留保がある企業で従業員一人月額一万円(一時金は年六カ月として一人十八万円)の賃上げをおこなうには、内部留保のわずか1・8%あればできると指摘。「賃上げや雇用の拡大などによって家計を豊かにすることこそが、景気を好転させ、日本の経済・社会を健全な状況へ導いていくことになる」と強調しています。


 内部留保 税制上の優遇措置などを利用して、企業がさまざまな名目でため込んでいる利益のこと。剰余金や積立金、引当金などがあり欧米に比べても異常に多くなっています。実態とかけ離れた金額を積み立てるなど、運用上も問題点が指摘されています。


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