2006年12月21日(木)「しんぶん赤旗」

主張

財務省原案

安倍「上げ潮」の正体見えた


 財務省が来年度予算の原案を各省庁に内示しました。

 安倍内閣の経済政策について、自民党の中川秀直幹事長は「『成長政策+歳出削減+適切な金融政策』のポリシーミックス(政策の組み合わせ)」だと説明し、「上げ潮政策」と呼んでいます。

 「成長政策」の最大の目玉は来年度の税制改定で大企業向けに数千億円規模の減税を用意することです。

 「歳出削減」では母子家庭の生活保護、私学助成、雇用関連の予算を削減します。予算とは別ですが「金融政策」では、国民の預金利子を目減りさせ銀行・企業に移転する超低金利政策の継続を求めています。

大企業奉仕一本やり

 財務省原案には、財界への奉仕と対照的に暮らしに冷たい安倍経済政策の特徴がはっきり表れています。

 生活保護費の母子加算の廃止や雇用関連予算の削減は、文字通り弱者を無慈悲に切り捨てるものです。これをもって「上げ潮」などと呼ぶのは、国民感情を逆なでするものでしかありません。

 公共事業にも同じ構図が見て取れます。スーパー中枢港湾や三大都市圏の環状道路など、財界が要求する大型事業の伸びは突出させました。利権と浪費の温床である道路特定財源の一般財源化は先送りです。公共事業の総額は「コスト縮減」と、公営住宅予算の八割減など生活関連事業の削減や地方関連、安全にかかわる維持修繕費の大幅カットで圧縮する逆立ちした手法です。

 総額三兆円の米軍再編を強行するための予算を計上した上、いわゆる「防衛予算」とは別枠扱いにします。従来の軍事費と米軍再編経費の両建てで無駄を膨張させます。

 これに加えて今後、税制では大企業向けに法人税の実効税率の大幅引き下げを狙う一方で、家計には来年の定率減税全廃に続いて、消費税増税を押し付けようとしています。

 こんなやり方のどこが「上げ潮政策」なのか。無駄遣いは温存し、国民から吸い上げたお金を、過去最高の大もうけを上げている大企業・財界につぎ込むだけです。

 財界には「上げ潮」でも国民には「引き潮」そのものです。ポリシーミックスというより、大企業の競争力強化一本やりです。中川幹事長は「まず企業から、そして家計へ」と言っています。さんざん大企業に減税してきたのに、いまさら「まず企業」とは、抜き難い財界中心主義です。

 大企業は空前の大もうけを上げてきました。しかし、〇一年から〇五年に、一人当たりの賃金は二十三万円も減りました。他方で資本金十億円以上の大企業の役員報酬は二倍、株主配当は三倍に拡大しています。

 十九日に日本経団連が発表した来年の雇用・賃金の方針によると、法人税実効税率の引き下げは要求しながら、賃上げを抑え、もうけや減税分を賃金には回さない態度を露骨に示しています。サービス残業を含めて一人当たり年百十四万円の残業代カットにつながる労働時間規制の緩和、ワーキング・プアを固定化する偽装請負の合法化、ベースアップと定期昇給の廃止を掲げています。

求められる民主的転換

 いくら大もうけしてもピラミッドの最上層で山分けするだけです。雇用・賃金、家計に配分することなど今の財界の念頭にはありません。

 雇用を守るルールを確立し、福祉と暮らしを最優先する予算に切り替え、税財政の所得再分配の機能を再建する経済政策の民主的転換こそが求められています。


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