2006年12月21日(木)「しんぶん赤旗」
庶民を襲う連続増税
家計は細くなるばかり
財務省原案内示
財務省は二十日、二〇〇七年度予算財務省原案を各省庁に内示しました。安倍自公内閣は初の予算編成で、国民をどこに導こうとしているのか―。暮らしへの影響を一つの典型家族、大倉さん一家(仮想)の家計にみてみました。(山田英明)
再チャレンジできない
幸二 えっ。まじかよ。父さんこれ見てみな。
源太 「負担増シミュレーション結果」か。これはひどいな。
安子 また、負担増ですか。わが家の家計がどんどん細っていくわよ。
源太が手にしたシミュレーション結果には、〇七年の大倉さん一家の負担増額が年五万三千円に達すると書かれていました。
所得税・住民税の定率減税が全廃され、〇六年に続き、厚生年金保険料も引き上げられる〇七年。国から地方への税源移譲の影響で、所得税が減額されるのもつかの間、住民税の増額が、定率減税全廃と相まって家計を襲うことになります。
所得税と住民税を合わせた負担増額は、源太と安子の二人分をあわせ年約四万円、厚生年金保険料の引き上げ額は同一万四千円となる見込みです。
安子 新聞には、生活保護や雇用保険の予算も削減するって書いてあったわ。
源太 たしか安倍さん(首相)のウリは「再チャレンジ」だったんじゃないのか。
幸二 そうだよ。庶民の再チャレンジを支えてきた制度を切り詰めておいて、よくも「再チャレンジ」なんていえるもんだね。
大企業減税の穴埋めに
源太 本当に腹が立つな。
幸二 何を怒ってるんだい。
源太 税制「改正」でも、予算でも大企業には大甘じゃないか。
政府・与党は、〇七年度税制「改正」で、大企業減税をたくらんでいます。減価償却制度「見直し」は巨額の設備投資をする大企業ほど減税の恩恵を受けることができます。
弘子 大企業はバブル期を超える大もうけをあげているんでしょ。なぜ、まだまだ火の車の家計に負担を押し付けて、大企業は負担をまけてやるの。許せないわよ。
幸二 そのうえ、税率を引き下げてもっと法人税をまけてやることを考えているみたいだね。
源太 大企業減税の穴埋めに庶民増税が使われているんだよ。
政府・与党は参院選後の来年秋に「税制の抜本的・一体的改革」の議論を本格化させる構えです。消費税増税とともに法人実効税率引き下げが議論されることは必至です。
弘子 日本経団連会長の御手洗(冨士夫)さんは、消費税率の2%の引き上げ(五兆円規模の増税)と法人実効税率の10%引き下げ(五兆円規模の減税)を求めているらしいわよ。
源太 まさに穴埋めだな。大企業優遇政治のために、庶民が犠牲にされる政治はまっぴらごめんだな。
高齢者は病院通えない
安子 お母さん。風邪は治ったの。
サツキ ゴホッ。まだつらいわ。お先まっくらだしね。
安子 どうしたのよ。
定一 税金も介護保険料も国民健康保険料もまた引き上げられるんだぞ。治る病気も治らないね。
地方で暮らす安子の両親。〇六年六月には、住民税増税(定率減税半減、公的年金等控除縮小、老年者控除廃止、低所得高齢者の非課税限度額廃止)が夫婦を襲いました。
〇七年度は、非課税限度額廃止に伴う住民税の段階的増税に加え、所得税・住民税の定率減税全廃が効いてきます。
さらに国から地方への税源移譲によって所得税が減額された分、住民税が増加します。
〇六年度の社会保険料増の影響は〇八年度まで及ぶ見込み。〇七年度にも介護保険料や国保料が増加します。
定一 お年寄りに死ねっていうような政治だな。
サツキ 毎年毎年取られる方だけ増えるわね。
定一 〇八年度には、また医療費があがるらしいぞ。
〇八年四月から七十歳から七十四歳の高齢者の医療費窓口負担を一割から二割に引き上げることなどを盛り込んだ医療改悪法案が、今年六月に自民、公明両党の賛成で可決・成立しています。
教育のこれから 心配
弘子 ただいま。みんな暗い顔してどうしたの。
安子 税金とかで持っていかれる分が増えるなって話していたのよ。そういえば、お兄ちゃんたちの通う大学への助成金も減らされるのよ。
幸二 えっ。うちの大学ってただでさえ経営が苦しいっていわれているのに、ますます厳しくなるじゃないか。
弘子の登場で始まった教育の話題。〇七年度予算の財務省原案に盛り込まれた私学助成削減の話から、「教育基本法改悪」に話が及びました。
源太 来年度予算は、さっそく教育基本法の改悪を具体化してきたっていう感じだな。
弘子 それって、何。私たちにも関係あるの。
安子 おおありよ。全国学力テストや学校評価の推進のための予算が盛り込まれたのよ。
弘子 テストが増えるのはいやだな。
源太 学校に競争とふるいわけが本格的に持ちこまれるわけだな。具体化をやめさせないとな。
安倍内閣が改悪教育基本法成立直後の予算編成でこだわったのは、同法の具体化でした。重点配分されたのは、「教育再生」を掛け声にした全国学力テストの実施や学校評価の推進などでした。一方、教育現場を支えてきた義務教育国庫負担金や私学助成、国立大学法人運営費交付金は軒並み削減されています。
大倉さんの家族
源太(42)=夫、年収四百五十万円
安子(42)=妻、年収三百五十万円
幸二(20)=長男、私立大学生
弘子(14)=長女、中学生
定一(71)=安子の実家の父
サツキ(70)=同・母
(登場人物は仮想です)
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