2006年12月25日(月)「しんぶん赤旗」

英外相発言

「イラク大量破壊兵器脅威とみなさず参戦」

“国民あおった”と非難の声


 【ロンドン=岡崎衆史】ベケット英外相が、同国政府内の誰も政府がイラク攻撃の理由にしたイラクの大量破壊兵器の脅威を実際には真に受けて考えていなかったと発言し、英国内で波紋を呼んでいます。発言が事実なら、政府はイラクが脅威でないと知りながら国民をあおって参戦したことになるため、野党からは厳しい非難の声が出ています。

 同外相は十九日のBBCラジオのインタビューで、「政府がイラクの大量破壊兵器を英国への脅威とはみなしていなかった」とする元英外交官カーン・ロス氏の証言について見解を問われました。同外相は、当時のイラク政権が中東地域への脅威であり、より広い地域に脅威を広げる意図をもっていたとしながらも、「誰もそういう主張はしていなかった」とし、イラクの大量破壊兵器を英国への脅威だとする考えが政府内になかったことを認めました。

 また同外相は、英政府が開戦前の二〇〇二年九月に発表した報告書に「イラク軍は生物・化学兵器を四十五分以内に配備できる」との文言が盛り込まれたことについて、「重要なことだとみなされていなかった」と述べました。しかし実際にはブレア首相が当時、下院でこの記述に言及。イラクが大量破壊兵器で紛争を引き起こし、英国にも影響を与える可能性を指摘しています。

 イラクの大量破壊兵器に関する情報について英政府独立調査委員会(バトラー委員長)は〇四年七月、「重大な欠陥があった」として、保有・使用計画の存在を否定しました。「四十五分以内に配備」の文言については、政府報告に「盛り込まれるべきでなかった」と結論づけています。

 ベケット外相発言について、保守党の影の外相を務めるヘーグ下院議員はメディアで、「情報を正すための閣内の努力がなされなかったのは驚くべきことだ」と批判。コラムニストのマーク・スティール氏はインディペンデント紙二十日付で、実際に脅威をあおっていながら、重要だとみなしていなかったとする外相の責任逃れの論法について、「どんなひどい行為も正当化する議論だ」と指摘しました。


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