2006年12月28日(木)「しんぶん赤旗」

増税なしで黒字化可能

国と地方の財政収支

内閣府試算でも裏付け


 税収増と歳出削減のみで財政再建が可能―。内閣府が二十六日の経済財政諮問会議に提出した資料は、消費税増税に頼らなくても財政健全化が可能になるという財政の姿を浮き彫りにしました。

 政府は「骨太の方針2006」で、二〇一一年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するために、歳出削減や歳入増で対応すべき額(要対応額)が十六・五兆円になると試算。このうち、十四兆三千億円から十一兆四千億円を、歳出削減で対応し、残り約二兆円から五兆円規模を増税で対応するとしていました。

 内閣府が今回示したのは、この要対応額が十三兆円に圧縮できるとの試算。その理由は、〇六年度に税収が増加したことにあります。さらに〇七年度予算案に盛り込まれた歳出削減額(三兆五千億円)を織り込むと、この額は九兆五千億円まで圧縮されます。

 歳出削減を「骨太の方針2006」通りに実施すれば、消費税などの増税による対応額が不要になる計算になります。

 同試算が浮き彫りにするのは、税収増と歳出削減の徹底によって消費税増税なしの財政健全化が可能になる道筋です。

 しかし、問題は歳出削減の中身です「骨太の方針2006」は、今後五年間の歳出削減のうち、約一兆六千億円(国と地方の合計)を、社会保障関係費の削減で対応するとしました。その具体化としてあげられているのは、生活保護の母子加算の廃止や介護や医療のいっそうの改悪です。

 そのうえ、大田弘子経済財政担当相は記者会見で、消費税増税がなくても財政再建が可能ではないかとの質問に「税体系のあり方としては、所得税、消費税、法人税、全部入る。全体として議論する」と回答。あくまでも消費税増税にこだわっています。

 歳出削減では、五兆円規模の軍事費や財界いいなりの大型公共事業を見直せば、社会保障関係費の抑制に頼ることなく、政府が示す必要な歳出削減額を賄うことが可能です。

 空前の利益をあげる大企業や高額所得者に応分の負担を求めれば、いっそうの税収を確保することができます。

 歳入と歳出の両面で大企業に温かく、家計に冷たい「逆立ち」を改めれば、消費税増税など必要ないことが、政府の試算によっても裏付けられています。(山田英明)

グラフ

 プライマリーバランス(基礎的財政収支) 国の基礎的な財政状態を示す指標の一つ。国債発行などの国の借金を除いた歳入と過去の借金の元利払いを除いた歳出の差を示します。「プライマリーバランスが均衡」すれば、税収等によって、過去の借金の元利払いを除いた歳出を賄うことができます。「プライマリーバランスが赤字」とは、税収等によって歳出を賄えず、国の借金残高が雪だるま式に膨らんでいく状態を示します。


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