2006年12月31日(日)「しんぶん赤旗」
イラク
フセイン元大統領死刑執行
住民の対立激化 懸念も
【カイロ=松本眞志】「人道に対する罪」で死刑判決を受けたイラクのサダム・フセイン元大統領(69)に対する絞首刑が三十日午前六時(日本時間同日正午)前、首都バグダッドで執行されました。イラク国営テレビが伝えました。二○○三年の旧フセイン政権崩壊後、同政権の犯罪を裁くために設置されたイラク高等法廷による死刑判決が執行されたのは初めて。判決四日後でした。
高等法廷は二十六日に、一九八二年のイスラム教シーア派虐殺事件への関与を理由にした控訴審でフセイン元大統領らを死刑とした一審判決を支持し、死刑が確定していました。執行期限は判決確定から三十日間でしたが、二十九日深夜にマリキ首相が米側と会談し、その際に執行時間が確定したとみられます。
ルバイエ国家安全保障担当顧問は「この日が国家統一とイラク人民の解放の日となるよう希望する。これは正義の確立にかかわる問題だ。国民が感情的にならないよう希望する」と語りました。
フセイン元大統領は、八○年代末にクルド人約十八万人が殺害されたとする「アンファル作戦」などへの関与でも起訴され、高等法廷で審理中でした。今回の死刑執行により、これらの訴追は打ち切られます。
死刑確定をめぐっては、旧政権から弾圧を受けていたイスラム教シーア派住民と、逆に優遇されてきたスンニ派住民との間では、異なった反応が出ています。両派の対立の激化やフセイン政権与党だったバース党残党の報復活動を懸念する声もあります。