2007年1月4日(木)「しんぶん赤旗」
庶民負担増が加速
安倍政権の2007年
格差さらに拡大の危険
貧困と格差の拡大をもたらした小泉政権の「構造改革」路線の加速を掲げる安倍政権。「成長なくして財政再建なし」のスローガンのもと、“大企業に優しく、庶民に負担増”の政治を本格化させる姿勢です。
最初の焦点は、安倍政権初予算の二〇〇七年度予算案。どのマスメディアも「企業優遇、家計冷遇」と酷評する内容です。
生活保護削減
「庶民に冷たい予算」の象徴は、五年間で社会保障費の伸びを一兆六千億円抑える方針を具体化し、〇七年度は二千二百億円の抑制を決めたことです。
狙い撃ちされたのが生活保護。一人親世帯に支給されている母子加算(子ども一人の場合で月二万円程度)を三年間で段階的に廃止するなどして約四百億円を削減するとしています。
母子加算はもともと十八歳以下の子どもがいる世帯が対象でしたが、「構造改革」路線の下で、〇五年度から十六―十八歳の子どもを段階的に除外。〇七年度の廃止を決めました。今回は十五歳以下を含めて全廃します。
昨年六月に成立した医療改悪法案の具体化もすすみます。厚生労働省は「医療制度改革の内実を固める年」(担当幹部)と位置付け、〇八年四月発足の七十五歳以上が全員加入する後期高齢者医療制度などの準備を急ピッチでおこないます。
同制度は、高齢者への新たな保険料負担や、「安上がりの医療」につながる高齢者独自の診療報酬を強いるもの。都道府県ごとに医療費抑制を競わせる仕組みもあり、「医療の格差」を拡大する恐れがあります。
社保庁を解体
安倍政権は、通常国会に年金業務を扱う社会保険庁の解体・改変法案を提出する予定です。
社保庁関連法案は、保険料徴収業務などを民間カード会社などにおこなわせる「ねんきん事業法案」が昨年の国会で審議されていました。ところが、法案審議中に、国民年金保険料未納者の「不正免除」問題が発覚。政府・与党が世論の「年金不信」を逆手にとって、新たな法案として作り直そうというものです。
政府・与党は年末、社会保険庁を解体して、「非公務員型の公法人」を新設して年金業務を移す案を決めることで合意しました。これは国民の将来にかかわる年金を、民間の信販・保険会社のもうけの手段に大変質させる狙いがあります。
〇七年度の年金保険料は厚生年金が0・354%の引き上げ、国民年金は二百四十円アップの月一万四千百円になります。安倍政権は、民間会社社員が入る厚生年金と公務員(国と地方)が加入する共済年金を一つにする「一元化」法案を国会に提出する予定です。また、パート労働者への厚生年金の適用を拡大する法案も検討しています。「負担あって給付なし」という事態にならないような世論の監視が求められています。
また年金をめぐっては、基礎年金の国庫負担を現在の三分の一から二分の一へ引き上げることが法律に明記されています。引き上げ財源では、消費税の目的税化や消費税率引き上げの案が取りざたされています。
教育分野でも
昨年末の臨時国会で成立した改悪教育基本法と一体となった動きも年頭から始まります。
安倍首相の直属機関である「教育再生会議」(野依良治座長)は今月中に中間報告をまとめる予定。それを具体化する教育関連法案を国会に提出します。
教育再生会議は、昨年末、不適格教員の排除などを柱とする原案を示しました。いじめ対策として、反社会的行動をとる子どもたちへの「サポートを伴う出席停止」を講じる案などの検討もされていますが、委員の間でも認識に差のある項目もあり、取りまとめまでに議論が続きそうです。
また、四月二十四日には全国共通テストが実施されます。対象は、全国の小学校六年生と中学三年生。子どもと学校を成績で序列化するもので、競争教育の激化と、学校の格差を拡大するものとして、批判の声が上がっています。