2007年1月7日(日)「しんぶん赤旗」
工場周辺住民に被害多発 石綿肺
厚労省が隠ぺい
06年施行 救済対象に入れず
アスベストを大量に吸引しておこるじん肺の一種「石綿肺」の被害が、アスベスト作業にたずさわったことのない住民に多発していることを把握しながら、政府がアスベスト(石綿)救済新法(二〇〇六年三月施行)の救済対象からはずしていたことが六日までにわかりました。
厚生労働省が〇五年九月に報告を求めた「企業等における住民検診結果の報告について」(労働衛生課長通達)による集計結果によると、二次精密検診を受けた二百五十六人のうち、アスベスト作業にたずさわったことのない住民八人(3・1%)が、石綿肺と診断されていました。いわゆる職歴がない住民です。アスベストが原因の胸膜肥厚斑(プラーク)があると診断された住民も、六十三人(24・6%)にのぼっていました。
同省労働衛生課によると、この検診結果は非公表とされました。昨年二月に終了した同省の「石綿に関する健康管理等専門家会議」にも報告していませんでした。
同課は「集計がまとまったのが昨年三月で、専門家会議はすでに終わっており、報告する機会がなくなった」と釈明。昨年三月に、広くアスベスト被害を救済するとして施行された同法にも、この検診結果は反映されることがなく、救済対象は肺がんと中皮腫だけに限定される結果になりました。
同法を所管する環境省の石綿健康対策室によると「救済対象の疾病は厚生労働省との合同検討会で決めたが、検討会でも、この検診結果は検討していない。二〇〇五年度に企業などが行った検診結果の報告を求めたが、新法施行後に把握した」としています。
昨年五月に大阪地裁に提訴し、アスベスト被害をめぐる全国初の集団国家賠償訴訟となった大阪・泉南地区のアスベスト訴訟原告団代表の岡田陽子さん=阪南市=も二〇〇五年に石綿肺と診断されました。石綿肺が職歴のない住民にも発症していることは、昨年、東大阪生協病院や耳原総合病院などが行った検診でもわかり、アスベスト救済新法の欠陥を裏付けるものと問題になっていました。
職歴なければ救済対象外
共産党は制度改善要求
肺が線維(せんい)化し、呼吸障害を引き起こすものとしては粉じんなどさまざまな原因がありますが、アスベスト(石綿)を吸い込んだことによって引き起こされた肺線維症を石綿肺と呼び、じん肺とは区別しています。
職場で十年以上、石綿粉じんを吸入した労働者が発症する職業病のひとつとされ、潜伏期間は十五―二十年。あとになっても石綿肺が進行することもあります。
労働者が石綿肺と診断された場合、労災認定で補償されますが、アスベスト関連工場周辺の住民が発症しても、職歴がなければ労災認定でもアスベスト救済新法でも救済されません。
日本共産党国会議員団は、石綿肺や呼吸障害をともなうびまん性胸膜肥厚斑なども救済対象にするよう、同法の指定疾患の見直しをはじめ、救済制度の改善を国会で要求してきました。(宇野龍彦)