2007年1月9日(火)「しんぶん赤旗」
区の介護認定基準 是正させた
ヘルパー訪問 元通りに
東京・北区 住民と共産党が運動
「要介護認定のランクが下がり、介護サービスが減らされた」。次々と寄せられる住民の声に立ち上がった東京都北区の日本共産党区議団(福島宏紀団長)。認定の訪問調査をめぐる区の指導に問題があることをつき止め、一年がかりの追及で改善をかちとる大きな成果をあげています。(内藤真己子)
「認定を改めさせたのは共産党の力。区議団のみなさん、本当によくがんばってくれました」。宮崎吟子さん(71)は感慨深げに語ります。暮れも押し詰まった昨年十二月二十九日、夫の正夫さん(94)の要介護認定の通知が届きました。これまでより二ランク上がって要介護2。削られていた訪問介護の時間を元に戻すことができます。
都営住宅に夫婦二人で暮らす宮崎さん。正夫さんは変形性脊椎(せきつい)症で両足に障害があり身体障害者二級に認定されています。左半身には感覚がなく、部屋でたびたび転倒します。
二年間、要介護3でしたが、昨年十一月の認定で「新予防給付」の対象の要支援2に下がりました。前回の訪問調査では、両足に「まひあり」だったのに、「まひなし」とされた影響です。
その結果、訪問介護が一回三十分ずつ減りました。お風呂に入れない正夫さんが、ホームヘルパーに体をふいてもらう時間がなくなり、認定のやり直しを求めていたのです。
党区議団には一年数カ月前から「要介護認定が厳しくなり認定ランクを下げられた」といった訴えが相次ぎました。調査で、区が二〇〇五年七月、独自に厳しい基準をつくって指導していることを突き止めます。以来、議員団は独自基準の撤回を要求してきました。
独自基準は、厚生労働省の担当者が「こんなに厳しいのは北区だけ」というほどのもの。百一歳で老人保健施設に入所中の人が施設サービスを受けられない「新予防給付」と認定され、ショックで一時危篤に陥る事態まで発生。区のランク下げのうえに、自民、公明、民主の賛成で成立した国の改悪介護保険法による給付抑制が重なり、大きな被害がもたらされていました。
議員団の追及を受け、区は昨年十二月初旬、是正措置をとりました。宮崎さんの認定のやり直しはその直後に行われ、改善された結果です。
福島団長は「誤った要介護認定のもとになっている独自基準を撤回させ、区民が安心して介護サービスが受けられるように全力を尽くしたい」と話しています。
東京・北区の介護認定
主治医「まひあり」 区調査で「なし」に
身をよじり料理
区民と党区議団「血の通う制度に」
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東京都北区で、日本共産党区議団が、要介護認定のランク下げの問題を最初に取り上げたのは二〇〇五年の九月議会でした。
その直後、「北区には要介護認定の調査にかかわる独自文書がある」との情報が寄せられ、区はその存在を認めました。
文書は、訪問調査員が、本人の身体状況などを中心に調査票にチェックする際の判定基準を示したもの。国や都の示した基準に区独自の解釈を加え、判定を厳しく制限するものでした。
「望ましくない」 厚労省も回答
たとえば、両足まひの判定基準を示した項目では、両足まひが「ある」と判定するのは「歩行が出来ない場合を原則」にするとし、「ほとんどの場合、要介護4や要介護5程度になる」と独自の基準を示しています。
また脳こうそくなど病気によるまひと、加齢によるまひについて、同程度でも後者の判定をより厳しく制限する独自の基準も設けています。
ある訪問調査員は「まひのチェックが制限されると、食事や着替えなど生活動作の支障についても正確に判定できず、低い要介護度の認定につながる」と話します。
区独自の基準について厚生労働省老健局老人保健課は「はじめから要介護度を例示するというやり方は望ましくない」「マヒの有無の調査にあたって原因による差異はない」と回答しました。
毎回の議会で改善を求める
党区議団は国や都に指導を要請。毎回の議会で被害の実態を突きつけ、文書の撤回と認定調査の改善を求めてきました。
脳性まひがあり、身体障害者一級に認定されているのに、要介護度が下がった秋元麗子さん(69)の場合は―。
当初は週六時間だった訪問介護が三時間に削られ、料理の下ごしらえをヘルパーに頼めなくなりました。やむなく、不自由な手で身をよじりながら野菜を切る秋元さん。無理な姿勢のため、首筋が痛くなり眠れなくなりました。夕食のおかずは四品から二品に…。
党区議団は、〇六年九月議会で、秋元さんのケースを追及します。
区側は、もともと両手足に「まひあり」と判定され要介護3だった秋元さんが、独自基準が出された後の〇六年三月では、「まひなし」とされ、要支援1に下がったことを明らかにしました。
また、要介護度を決める認定審査のさい、訪問調査の結果とあわせて検討される主治医の意見書には「四肢に中程度のまひあり」とされていたことも判明。区は「『まひなし』としたことには、疑問はある」と認めざるをえませんでした。
介護保険予算12億円も余る
党区議団は独自基準が誤った要介護認定につながっていると指摘し、独自基準の撤回と認定調査の改善を要求。これに区は、独自基準に当てはまらなくても、調査票に理由を詳しく記載すれば、調査員の裁量で「まひあり」の判断を認める是正措置をとったことを明らかにしました。
同十一月議会で区議団は、独自基準を出した〇五年度には「要支援」が急増、介護保険予算が十二億円も余ったことを示し「血の通う介護保険に」と訴えました。
小池晃参院議員も厚生労働委員会で、国に同区の独自基準を改めさせる指導を求めました。
追及が続く中、区は十二月四日、認定調査員全員が対象の研修会を開き、議会で約束した改善策などを徹底するに至ったのです。
党区議団の福島宏紀団長は、「障害者団体などが区に申し入れるなど区民の運動と共産党が手を結び、改善をかちとることができました。今後も独自基準の撤回に向け、引き続き力を合わせたい」と話しています。
要介護度の区分 改悪介護保険法で〇六年四月「新予防給付」が創設され、要介護度の区分は「新予防給付」の要支援1―2と、「介護給付」の要介護1―5に分かれました。これまで要介護1とされていた人は、認知症や病気・けがの急性期などを除いて要支援2とされ「新予防給付」に回されます。「新予防給付」になると施設サービスは利用できず、訪問介護などの利用も制限されます。軽度者のサービスを切り下げ、給付を抑制するのが狙いです。