2007年1月11日(木)「しんぶん赤旗」
失業対策切り捨て
厚労相 雇用保険法改悪の要綱
柳沢伯夫厚生労働相は九日、失業手当を支える雇用保険への国庫負担の大幅削減や、季節労働者の生活を支える「特例一時金」の給付切り下げなどを盛り込んだ雇用保険法「改正」案要綱を、労働政策審議会(菅野和夫会長)に諮問しました。
失業率が高止まりし、非正規雇用や「ワーキングプア」(働く貧困層)の増大が社会問題となっているにもかかわらず、雇用に対する国の責任を投げ捨てるものです。労働者からは「雇用情勢の好転で保険財政が改善しているのに、給付切り下げはおかしい」「国庫負担削減ではなく、保険料の大幅引き下げや給付の改善こそ急ぐべきだ」との声があがっています。
要綱では、特例一時金の給付を現行の基本手当五十日相当分から三十日相当分に削減(当分の間は四十日相当分)。すでに決まっている「冬期援護制度」の今年度打ち切りと併せて、季節労働者の生活を直撃します。
国庫負担は来年度から45%にのぼる大幅削減。六十歳から六十五歳までの再就職に伴う賃金低下を補てんする高年齢雇用継続給付の国庫負担の廃止を打ち出しました。雇用保険三事業のうち就職資金の貸し付けなどを行う雇用福祉事業も廃止します。
一方、短時間労働者の被保険者資格にかんする正規労働者との区分の廃止や、育児休業給付の10%引き上げが盛り込まれています。
安倍内閣は来年度予算で二千百十二億円もの失業対策費を減らす計画です。そのため厚労省は、通常国会に「改正」法案を提出。四月施行をめざしています。
“冬の間、無収入に”
北海道の季節労働者約14万人
北海道の季節労働者は約十四万人。降雪などで仕事ができない労働者の生活を支えてきたのが、「冬期援護制度」と「特例一時金」でした。
ところが、冬期援護制度は今年度で打ち切られます。特例一時金(一人平均二十五万円)の削減によって一人約五万円、道内全体では三百三十億円の減収となり、地域経済への影響も甚大です。
「政府は“景気は回復している”というが、どこの話だ」と憤るのは、建交労旭川支部委員長の佐藤昇さん(67)です。
道内でも厳冬で知られる同市の季節労働者は約八千百人。これに対し、求人はせいぜい四千人程度。「年齢制限で来年度から雇用がない」「会社の不振で辞めてくれといわれた」など深刻な相談が寄せられています。
「特例一時金まで減らされれば冬期間、無収入になってしまう。再チャレンジ支援どころか、安倍内閣がやろうとしているのは“死ね”ということ。弱者切り捨て、地方切り捨ては許せない」
佐藤さんら建交労組合員は「地元で働く仕事と九〇日支給復活を要求する北海道連絡会」に結集して、季節労働者の雇用と生活を守れと運動してきました。道内の自治体・議会でも、制度存続を求める意見書などを相次いで可決しています。
佐藤さんはいいます。
「これで負けていられない。労働者や住民と力をあわせて、運動をさらに強めていく。選挙でもそのことを訴えて、雇用と生活を守るためにがんばっていきたい」