2007年1月11日(木)「しんぶん赤旗」
「核兵器ない世界」
米元高官4人よびかけ
保有国の指導者に努力要求
【ワシントン=山崎伸治】キッシンジャー氏ら米国の国務長官、国防長官、上院議員経験者四氏が「核兵器のない世界」の実現を呼びかけ、そのために米国の「大きな努力」を求めた論文をウォール・ストリート・ジャーナル紙四日付に寄稿しました。北朝鮮核問題などが重大化するなかで自国の核開発に執着するブッシュ政権への批判が、米核世界戦略を立案、推進してきた人々にも及んでいることを示す注目すべき動きです。
四氏は、ニクソン、フォード政権のキッシンジャー元国務長官のほか、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長です。
論文は、北朝鮮とイランの核開発に加え、テロリストが核兵器を手にする危険があるもとで、核抑止力に依存することは「ますます危険になる一方、ますます有効でなくなっている」と警告しています。
一九八六年十月には、当時のレーガン大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が一度は核兵器廃絶で一致していたことを強調し、その実現を妨げているのが核兵器保有国だと批判。核保有国が核不拡散条約(NPT)の責務を果たしていないため、非核保有国が懐疑的になっていると指摘しています。
四氏は、核兵器廃絶のため第一に「核保有国の指導者が努力を強め、核兵器のない世界という目標を共同の事業とすること」を提言。その上で、(1)核兵器の警戒態勢の解除(2)核兵器の大幅削減(3)前進配備用の短距離核兵器の廃絶(4)包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准(5)核兵器および核兵器転用可能物質の保安強化―などの措置を提案しています。
「核兵器のない世界というビジョンと、その目標実現に向けた現実的な措置を改めて主張することは、米国の倫理的な伝統とも両立する大胆な提案となりうる」として、米政府に核兵器廃絶に向けた具体的な行動をとるよう強調しています。
論文について米民間組織「核時代平和財団」のデビッド・クリーガー会長は同財団のウェブサイトで、「市民社会が冷戦終結以来主張してきたこと」が、「かつて冷戦期の核戦略を統括した主要な元高官らについに受け入れられた」と強調。その実現には「ブッシュ政権の核政策の全面転換が必要だ」と指摘しています。