2007年1月12日(金)「しんぶん赤旗」

労働法制改悪反対

守ろう働くルール

党闘争本部長 市田書記局長に聞く<下>

憲法に反する法案

提出させない運動を


 ――労働法制改悪を急ぐ背景には労働者、国民の反撃に財界があわてているという面もありますね。国民的なたたかいを起こし、阻止するために大事なことは何ですか。

 市田 確かに矛盾が広がっていますが、相手はあきらめてはいません。そこを甘くみてはなりません。

 いま大事なことは、通常国会に法案として提出させないたたかいを繰り広げることです。かつて小選挙区制を導入しようとしたとき、国民の意思を反映しない反民主主義的内容を徹底的に明らかにして、法案の提出そのものを断念させた経験を持っています。そうしたたたかいを国民のみなさんと一緒にすすめたいと思います。

ルール破壊狙う

 またよく見ておく必要のあるのは、「戦後レジーム(制度)の解体」を叫ぶ安倍首相のもとで、財界が「雇用のルールを思い通りに変えたい」と露骨な動きをしていることです。

 今度の国会に出そうとしている労働法制の改悪でもまだ足りないと、経済財政諮問会議などの場を使って、「労働ビッグバン」などといって、いまある労働ルールの全面破壊に直接、乗り出しています。同会議には、労働者代表がいません。財界と政府代表などによって構成されています。自分たちの意のままにできる仕組みにしています。

 私は昨年の十月、偽装請負の問題を告発し、安倍総理に、法律にもとづいて厳正に対処するよう求めました。安倍首相も「ワーキングプアを前提に生産計画が立てられているとしたら問題だ。法令違反には厳正に対処する」とこたえざるを得ませんでした。

 ところが、その日の午後に開かれた経済財政諮問会議で、日本経団連の御手洗会長は、法律違反の自分の責任は棚に上げて、「法律の方を変えるべきだ」と発言しました。経済財政諮問会議では、この御手洗発言を受けて、偽装請負を合法化する労働者派遣法の改悪(期間制限の撤廃、直接雇用義務の撤廃)などを検討対象にしています。

 今回の労働政策審議会では、見送りになった金さえ払えば自由に解雇できる制度や、労働組合の団体交渉権を制限(一定割合以下の組織率の労働組合の団体交渉権をはく奪)する動きも予断を許しません。これは、解雇は自由、労働者の団結権や交渉権も認めないというものです。

 しかし、財界のこの要求は、何の道理もないばかりか、現憲法のもとでは、とうてい許されません。

 日本共産党は四日に開いた第三回中央委員会総会で、「憲法二五条の生存権をまもる国民的大運動」をよびかけました。昨年末の常任幹部会で私を本部長に労働法制改悪阻止闘争本部を設置しましたが、このたたかいも第三回中央委員会総会が呼びかけた「大運動」の一翼をになうものです。

 ――反撃の道理、よりどころは憲法にあるわけですね。

 市田 ええ、そのとおりです。

不当な理由づけ

 資本主義経済のもとでは、自由な商品の取引、自由な契約が基本です。しかし、労働者と使用者との契約関係も自由にすると、使用者が圧倒的に強い立場にありますから、使用者のいいなりの労働条件、長時間労働と低賃金、劣悪な労働環境を余儀なくされることになります。

 実際、明治以来、戦前の日本の労働者は、生存すら脅かされてきました。さらに「奉公」や「タコ部屋」など封建的な労働関係が残っていましたから、いっそう過酷な労働が強いられていました。「人間らしい働き方」「一日八時間労働」を求めて労働者の運動が起こったのは当然のことでした。

 しかし、戦前の日本では、こうした運動は、世界でも例を見ないほど暴虐な弾圧の下に置かれ、「人間らしい働き方」の実現は、戦後、新しい憲法の成立にまで持ち越されました。

 憲法二七条二項は「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」としています。これは、資本主義のもとでも労資関係は、他の取引のように当事者の自由契約にしてはいけません、という労働者保護の原則を確立したものです。

 法律で定められる基準も明確にされました。労働基準法は第一条で「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」としています。これはもちろん、憲法二五条一項の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定を受けてのものです。

 「ワーキングプア」という働かせ方や八時間労働時間という法規制を取り払うことの不当さが、この点からも明らかです。

 最低労働条件の水準を決めるのに、もう一つ重要な基準があります。それは、国際的な水準を達成するというものです。戦前の日本では、劣悪な労働条件が繊維産業などの国際競争力のもとにされていました。

 そのひどさは、『女工哀史』などで詳しく告発されていますが、「ソーシャルダンピング」(不当廉売)として、国際的に非難されました。その反省から、労働条件の低さを国際競争力の道具にしないとの決意が憲法にこめられているのです。

 しかも、政府の「ものづくり白書」でも、各業種の世界トップテンに日本企業が軒なみ、半数以上を占めています。日本企業の国際競争力はすでに非常に高いのです。

 ですから、いま財界が労働法制改悪を「国際競争力を維持・強化するため」といっていること自体が、不当な理由付けなのです。

要求とむすんで

 こうした憲法の視点で職場の状況を見回したとき、憲法の理念はもちろん、それにもとづいて制定された労働基準法などの現行法にも違反している例が、まん延しているのではないでしょうか。

 「サービス残業」や偽装請負の二大無法はその典型でしょう。また「ワーキングプア」という働かせ方や、生活保護水準以下の最低賃金など、あってはならないことです。そうした職場や地域で働く労働者の要求と結んで、壮大な運動を繰り広げようではありませんか。(おわり)


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