築3年でベランダにひび/よくあると聞きショック回答者 一級建築士新井啓一さん 質問 築3年の50戸のマンションです。ベランダと共用廊下にひびが見つかり補修が必要になりました。新築なのにと納得できないのですが。(東京都・T子) 新井 どこにどのように入ったのですか。 ――私は2階です。ひびは居住部分を挟んでベランダと共用廊下の床に、南北にほぼ同じ線上に出ています。上の各階も同様です。 新井 床の仕上げ材はモルタルですか、シートですか。 ――シートです。 新井 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の欠陥判断指針では、0・3?以上のひび割れを欠陥のおそれがあるとしていますが、どうですか。 ――それほどひどくはないと思います。 新井 建築業者に全面的な調査と原因究明は求めたのですか。 ――建築業者の1級建築士が来て説明会が開かれました。建築士は、ひびが入るのはよくあることだと…。 新井 確かにひび割れを完全になくすことは難しいです。 コンクリートは、セメントと水、骨材である砂利と砂を混合してつくります。その際、セメントが水との化学反応で固まり収縮して(水和反応)ひび割れが起きるのです。風や太陽熱による乾燥、地震なども影響します。 ひび割れを防ぐために材料の選択と調合の検討、設計・施工の両面で対策を立てることが必要です。設計の段階で誘発目地(ゆうはつめじ)をとってあったかも大切です。 ――誘発目地とは。 新井 ひびが入りやすい部位にあらかじめ目地をつくり、そこに集中させるのです。 ――そのようなものは見当たりません。 新井 一般的に共用廊下やベランダは造りが比較的薄く外気に面する部分が広いため、熱などの影響が大きくひびが入りやすい場所です。お話を聞いた限りでは、乾燥収縮によるひび割れだと思います。ところで居住部分はどうなのですか。 ――もう住んでいるため、部屋の床の下のコンクリート部分までは調べていません。 新井 そうであれば管理組合に申し入れて調査に取り組んでもらうことです。建築業者の了解を取り付け、ひびが入った住戸の居住者を説得した上で、部屋の床の一部をはがして調べるのです。 ――知り合いの役員に話してみます。 補修費用ですが、今回は建築業者が負担します。でも、またひび割れしたら自腹だと言われたのですが。 新井 ひび割れの原因と程度によります。今後もひびが広がるようなら、施工等に問題があった可能性もあります。管理組合が建築業者とねばり強く交渉し、修理後の経過観察を含めてできるだけ長期間の維持・管理の保証を文書で確認するようにしてください。 (「しんぶん赤旗」2004年11月17日) |