管理費の支払いを求めて/新理事長に代わり裁判は

回答者 弁護士・萩尾 健太さん


 築8年で95戸のマンションに住み、先日まで管理組合の理事長をしていました。現在、区分所有者の中で管理費の長期滞納者が数人いるので、支払いを求めて裁判を起こしたいと考えています。
 本来なら規約上の管理者である理事長が原告となるところですが、新理事長は交代したばかりで、原告になることに二の足を踏む恐れがあります。そこで、事情の分かった私が理事長に代わって総会の了承を得て原告になることができるでしょうか。
 建物区分所有法57条3項は「区分所有者が第6条1項に規定する行為をした場合は、管理者または集会において指定された区分所有者は、集会の決議により…訴訟を提起することができる」とされているのですが。
(大阪府・S生)


 萩尾 建物区分所有法6条1項が規定するのは、「建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」です。
 これは、(1)マンションを不当に棄損する行為、(2)マンション内に重量物や危険物を運びこむような建物を不当に使用する行為、(3)騒音、振動など生活を妨害する行為とされます。

 ──そうすると、管理費の滞納は、「共同の利益に反する行為」に入らないのでしょうか。

 萩尾 「著しい管理費の滞納」が入るという判例もありますが、入らないという判例もあります。
 57条は「共同の利益に反する行為の停止」に関する訴訟等を定めた条項です。それより、通常の場合の訴訟に関する条項があるので、それでやればよいと思います。

 ──それはどんな規定ですか。

 萩尾 26条4項に管理者が原告として提訴できると定めた規定があります。

 ──すると、原告は管理者名になりますね。

 萩尾 そうです。ただ、管理者はマンションの業務執行機関であって、管理者個人が提訴するのではありません。
 そのため理事長名義の訴訟であっても、少額訴訟(60万円以下)の場合、管理組合の理事などが代理人となることを認めている簡易裁判所も多いようです。そこで、あなたが代理人になるという形でサポートすればよいでしょう。

 ──集会の決議で訴訟を提案するため、議案書に被告名や滞納金額を書くことが許されますか。

 萩尾 被告本人のプライバシーや名誉との関係がありますが、長期滞納が事実である以上、法的には問題ありません。

 ──議決はどのように決しますか。

 萩尾 議決は39条1項にあるように、「別段の定めのない限り区分所有者及び議決権の各過半数」でよいです。

(「しんぶん赤旗」2004年04月21日)



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