近くのマンションでピッキングの被害が発生したとのことなので、当マンションで玄関ドアを「一ドア二ロック」にしたいという話が出ています。それに対して、区分所有者の中から、無断で工事をしてもよいのか問題だという意見も出ています。どのように考えたらよいのでしょうか。(東京都・H生)
榎本最近、ピッキングといって、道具を使って玄関のドアを開け、室内に侵入して、現金、貴金属、パソコンなどを盗む事例が発生しています。
都内では、昨年の一月から十月までの間で一万件を超え、一昨年の二倍以上になっています。そして、最近では首都圏ばかりでなく、大阪、福岡など全国的に広がっています。
これに対する防止策としては、簡単には開けられないかぎに交換する、あるいはドアのかぎを二重にする、いわゆる「一ドア二ロック」の方法がとられています。
――そこで、この防止策をとることになると共用部分に関わる工事になるのではないでしょうか。そうすると、管理組合の決議が必要になるのではないかという意見が出ているのです。
榎本なるほど、玄関ドアについては少なくとも外側は共用部分に当たることは間違いありません。そうすると、「一ドア二ロック」にすることは、共用部分の変更になるのではないかという意見が出てきそうです。
区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)上、「共用部分の変更」ということになりますと、区分所有者および議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議が必要になりますし、仮に「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しない共用部分の変更」になる、あるいは「共用部分の管理に関する事項」になると考えても区分所有者および議決権の各過半数による集会の決議が必要になりそうです。
――やはり集会の決議が必要なのでしょうか。
榎本いや、私はピッキング防止策として、玄関ドアのカギを交換することや「一ドア二ロック」にすることは、「共用部分の変更」あるいは「共用部分の管理に関する事項」にあたるものではなく、共用部分の「保存行為」(区分所有法一八条但し書き)にあたるものと考えます。
「保存行為」と考えるべき理由は、玄関ドアは防犯のためにあり、そのドアに防犯措置をとることはドア本来の目的に合致することで、「用法に従って使用すること」(同法一三条)になるからです。
したがって、この問題で集会の決議は必要でなく、区分所有者がすることができることになります。
――ところで、マンション居住者として、玄関ドアのカギを交換したり、「一ドア二ロック」にすることだけが防犯対策として有効なのか疑問に思っているのですが。
榎本防犯対策でもう一つの大切なことは、マンション住民相互の関係だと思います。
普段からマンション住民同士の交流を密にし、見知らぬ者が通路をはいかいしていたり、玄関チャイムを鳴らして留守を確認していたり、玄関前で周囲を見張っているなどを見かけたら、住民間で連絡をとりあえる体制をつくっておくことが大事です。
(2001年01月17日)
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