販売説明会で払った申込金10万円だったが手付金では

回答者 弁護士 横松昌典さん (淡路町法律事務所)


 

 新築マンションの販売説明会に行き、気に入ったので申込書を書きました。その際に、「申込金」を十万円払いました。これはどんなお金なのでしょうか。(千葉県・A子)


 横松販売価格はいくらですか。
 ――気に入った物件は三千五百万円です。

 横松その十万円は、通常「申し込み証拠金」と呼ばれるものです。
 ――「手付金」とは違うのですか。

 横松手付金は、放棄することによっていつでも契約を解除できる「解約手付」とみられるのが一般的です。金額としては、売買代金の一〇%から二〇%程度が多いようです。
 申し込み証拠金の法律的な性質については、「手付金」の一種とみるかどうかですが、考え方が分かれています。
 手付金は、売買契約を締結する際に支払われますが、申し込み証拠金はこの手付金の一部に充当されるのが通常です。
 ――実は、説明会場までは車で連れていかれたので分からなかったのですが、帰りに駅まで歩くとかなり遠かったので、契約をするかどうかは迷っています。
 契約をやめることはできますか。その時に、十万円はどうなりますか。

 横松契約申し込みの段階であれば、キャンセルすることはできます。
 申込書には、契約が成立しなかった場合の申し込み証拠金の返還について書かれていますので、申し込みの際に確認する必要があります。
 申し込み証拠金については、一九七三年に建設省から「申し込み証拠金の額が申し込みの事務処理に通常必要とされる費用の額を大幅に上回って授受される場合は、宅地建物取引に関する著しく不当な行為にあたる」との通達が出されており、現在は、契約不成立の場合は返還するのが一般のようです。
 ――契約書に署名なつ印をしてしまった後でやっぱりやめたい時は、どうすればよいのですか。

 横松「手付流し」といって、先ほどの解約手付金を放棄することで解約できます。
 ――契約をする場合はローンを組まざるを得ないのですが、契約したのにローンの承認がおりなかった場合でも、代金を払わなければならないのでしょうか。

 横松売買契約を締結すると、売り主は権利を移転し物件を引き渡す義務、買い主は代金を支払う義務が発生します。
 ローンが組めるかどうかは買い主側の事情ですので、何も決めていないと、ローンが組めなくても代金を支払わなくてはなりません。
 そこで、「ローン特約」と呼ばれる条項をつけておく必要があります。これは金融機関からの借り入れができなかった場合は、契約を白紙にすることができるとするものです。代金の支払い義務はなくなります。
 ――この場合は手付金を返してもらえるのですか。

 横松契約自体がなかったことになりますので、それまでに支払った手付金は返してもらえます。


(2001年02月21日)



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