マンション管理適正化法成立で何が変わるのか

回答者 弁護士 山下基之さん(東京合同法律事務所)


 

 マンション管理適正化法が成立したと聞きましたが、何が変わるのでしょうか。
 (東京都・S生)


 山下 この法律は、今年九月から施行される予定ですが、主な点は次の通りです。
 国はマンション管理の適正化に関する指針を決めることと、管理組合はマンションの適正な管理に努めるべきであることを定めました。マンション管理を営もうとする者(いわゆる管理会社)は、国土交通省にマンション管理業務登録を義務づけられ、事務所ごとに、国家資格である管理業務主任者を置かなければなりません。
 そして、マンション管理業者でつくる団体が管理組合からの苦情の解決を行います。これは、管理会社のずさんな管理を改めさせるために、国が監督する道を開いたということです。
 さらに管理組合が運営上要求される専門知識を助言、指導するマンション管理士という資格を創設しました。
 ――管理上のトラブルを解決する上で有効な制度ができたのですね。

 山下 そうですね。管理業者の登録制度により、悪質な業者や管理自体に問題がある業者は、登録の取り消しや登録が拒否されることにより、排除されることになりますよね。
 ――マンション管理士の助言や指導というのは、期待できるのでしょうか。

 山下 その点は、今後の運用により、評価されると思います。つまり、どういう人が管理士になるのか、管理組合とどういう関係になるのかは今はまったく不明ですね。
 たとえば管理業者の担当者が管理士になって、組合の運営にかかわるということが考えられますが、その際、管理業者のチェックができるのかという問題があります。管理士に期待される役割は管理組合の利益のために、運営上の指導、助言をすることですので、管理業者と立場を同一にするのは問題です。
 ――そのほかの改正点は。

 山下 宅地建物取引業者は、自ら売り主として人の居住の用に供する独立部分がある建物を分譲した場合には、管理組合の管理者に対して、設計図書を交付することが義務づけられました。管理が管理組合に円滑に引き継がれることを目的にしたものです。
 今回の法律は、マンション管理を初めて法律に明記した点、管理会社に法の網をかけた点では評価できます。しかし、まだ第一歩で、適正なマンション管理の実現は、管理士の業務内容の基準、管理業者の適正業務の標準など、具体的な運用により図られるものと思います。
 また、管理組合がマンションの適正な管理に努めるとともに、各区分所有者が自らの財産や居住環境を維持するため、積極的、自主的に管理にかかわる必要があることはいうまでもありません。


(2001年06月20日)



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