築二十二年のマンションに住んでいます。最近、私も役員をしている管理組合で、建物も古くなってきたので耐震診断をしたいという話が出ています。それはどのような内容で、経費はどれぐらいかかるのでしょうか。(東京都・N生)
新井 建物の構造、階数、規模は。
――鉄筋コンクリート造り、六階建て、住戸面積は平均六十平方メートルで九十戸ほどです。
新井 外壁などの大規模修繕は計画的にしていますか。また、設計図などの記録は。
――五年前に行いました。図面は管理事務所にあるそうです。
新井 わが国の耐震設計基準は大きな地震のたびに改正され、最近は一九八一年に大幅に見直されました。新耐震設計法といわれます。ご相談の建物は築年から新基準以前の建物なので診断を行うことはよいことです。
旧基準で建てられたもので地盤が特に軟弱な場合、平面計画が複雑なもの、ピロティ(二階以上を部屋とし、一階を柱だけにした建物の一階部分)が混在するもの、階高が不ぞろいなもの、老朽化が著しいものなどが「問題あり」といわれています。
耐震診断はまず予備調査から始めます。これは、現存している設計図などの記録を調べたり、現地での目視を基本に外壁コンクリートの一部を切り取り、強度テストや中性化の進行具合をみたりして躯体(くたい)部の老朽化を調査します。これらの結果を総合的に検討して、建物の特徴や調査の大まかな方向性を決めます。この方向に沿ってさらに一次、二次、三次診断があり、次数が上がるほど詳細な検討を伴います。
費用は、建物によって違いますが、予備調査でおおむね三十〜五十万円、二次診断まで行うと一戸当たり五万円ぐらいでしょう。
――組合員の中にはあまり金がかかるなら建て替えたほうがいいという人もいます。
新井 いろいろな意見を検討し、より現実的で安心が得られる方向を見つけ出してください。
耐震診断で大事なのは、何をどのように実現させるかを確認しながら進めることです。安易に進め、大掛かりな補強が必要との結果が出て、不安だけが残ることにならないようにしたいものです。
それには専門委員会を設け、専門家を招いて予備調査結果をもとに学習会を持ち、自分たちの建物の特徴をつかみ話し合いを重ね、診断の目的を見つけ出していくことです。話し合いを通して居住者間の理解も深まり、非常時の防災対策にもプラスになるはずです。
ただし、その目的を実現する方策は柔軟に構えることも大切です。専用住戸におよぶ大規模な補強工事は大変困難です。その場合でも、共用部の問題個所だけでも手をつければ、被害の程度を軽減させることができるのです。
(2001年07月18日)
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