建築後十年たったマンションですが、隣地のマンション建築工事で敷地が陥没してしまいました。隣地との境界の近くにあるごみ置き場では床にヒビが入り、駐輪場では土間に段差ができ、屋根の柱が少し傾いています。
施工者との交渉では最初は被害を与えたことを認めない口ぶりでしたが、後では施工者も認めています。ただ、被害の程度を少なく見せようとしているせいか、誠意を持って対応してくれない気がします。
施工者を相手にするだけでよいでしょうか。どのように交渉したらいいですか。私は管理組合の理事をしています。(神奈川県・S生)
千代崎 施工者はどういっていますか。
――床のヒビは埋め、段差はならす程度でよく、柱の傾きは実用に差し障りはないだろうというのです。
千代崎 それではだめですね。建築工事による公衆災害防止のためには、要綱によって守らなければならないことが決められていますので、きちんとした対処をしなければなりません。
床のすき間を埋めるだけでなく、床そのものや柱の基礎まできちんと調べさせ、完全な原状回復をすることを保証させましょう。
もともと建築に当たって選ばれる工事・工法は、近隣に被害を与えるものを選んではならないのです。
建て主は、被害を与えないような工事ができる費用を用意しなければなりません。
施工者は、被害の出る工事・工法を避ける費用を見積もりの中に上積みしなければなりません。その上で万が一被害を与えたときにのみ、それぞれが責任を持つわけです。
以上のようなことは「建設工事公衆災害防止対策要綱」の中に定められています。
――私の場合には、交渉相手は施工者だけでよいのですか。
千代崎 あなたの場合は、一方的な被害者です。加害者・起因者としてはまず建て主です。先のように原状回復を施工者が行えば、目の前の問題は当面は解消します。
しかし現在の被害だけでなく、将来にわたって陥没の恐れが残りますので、そのときは不安を解消するために建て主、施工者ともに責任を持つとの約束をしてもらいましょう。
それだけでなく、さらに設計者・管理建築士・現場代理人などを相手として考えます。それぞれの資格を持つ個人も相手としておけば万全です。つまり会社がつぶれても、なくなっても、会社を辞めても責任を問おうとするものです。
(2001年08月22日)
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